もう病気とはいえない老衰
点滴ができなくなっても・・・
余命が短くなっても・・・
なんとか自宅で見送ってあげたい・・
そう考える子供たちの願いは不可能なのでしょうか?

10人に8人が「自宅で死にたい」と考えているが在宅介護・看護は不可能なのか?

ameblo
こんにちは
エンディングナビゲーターの江本です。

ある方の高齢のご両親(認知症兆候有り)の件でご相談を受けました。

その方曰く
「親孝行の意味でも最先端の医療を受けさせたい!」
「1日でも・・・たとえ1秒でも長生きさせてやりたい!」

そう言われるのですが・・・

お気持ちはすごくよくわかります。

しかし、お話を聞いていて少し違和感が・・・

答えは一つだけではありません。

あくまでケースバイケースということも前提としてありますが、
このテーマでみなさんで考えてみませんか?

私も父と母を亡くして、
もっとこうしてあげれば・・・ああしてあげていれば・・・・
そんな後悔をしているのは事実です。

しかし、少しだけ冷静に、客観的に考えてみませんか?

【最後まで自分らしく生きる】ということは、
必ずし【1日でも長く生きる】こととは微妙に異なる場合もあると思うのです。

80%の人が「最後は自宅で暮らしたい!看取られたい!」と願っています。

「病院ではなにもすることが無くて退屈だ。
 最後は家族の顔を見ながら、気ままに暮らしたい。」

「無理な延命治療で何本ものチューブにつながれて、ただ命を永らえているよりも
 家族がいる自宅で看取られたい。」

確かに病院にいるよりも、「長年 住み慣れた我が家で最後の時を迎えたい」という方も多いのです。


余命が限られた場合、「自宅で過ごしたい」と答えた人は80%

自宅に帰りたい

公益法人 日本ホスピス・緩和ケア研究財団:2012年 アンケート
http://www.hospat.org/research-202.html

多くの人(約80%)は、自宅で最後の時を迎えたいと希望しています。

現実は80%の人が自宅での死を望んでも、
80%近くが病院で亡くなっているという現実

自宅で亡くなる人・・・・・・・12%程度
老人ホームで亡くなる人・・・・10%程度

現実には病院で亡くなる人が最も多く、約80%近くにもなっているといわれています。


多くの人が「自宅で最期を迎えられない」理由

いくら本人が「自宅での最後(以下在宅死と呼びます)を望んでも
多くの人が、それを叶えられず
病院での長い闘病生活の末、そこで最後の時を迎えています。

それには、様々な理由があります。

少子高齢化や核家族化といった今の日本の事情もあります。

「介護や看護ができる家族がいない」という理由もあるでしょう。

また、最初から
「介護や看護なんて無理無理無理!できない!」(やりたくない?)
と簡単に施設や病院に丸投げしてしまう?
そんな今の家族関係の希薄さもあるでしょう。

厚生労働省 「平成20年 終末医療に関する調査」では、
在宅死を諦める人の理由を以下のようになったと発表しています。(複数回答)
第1位 「介護してくれる家族に負担がかかる。」(79.5%)
第2位 「症状が悪化した時の対応が自分も家族も不安」(54.1%)
第3位 「経済的な負担が大きい」(33.1%)
第4位 「往診に来てくれるかかりつけ医がいない」(31.7%)
第5位 「病状が悪化した時にすぐに病院に入院できるか不安(31.6%)

このアンケート結果を見て、
「少し皆さんに誤解があるのでは?」
感じています。



在宅介護ケアのサポート体制ができれば、在宅死も可能になる

と思います。

そして、在宅療養の方が経済的に少なくて済むという場合もあります。
※ 詳細は後述

在宅介護ケアのバックアップ体制を作る

最後の時を自宅で迎えるためには、とても一人の力だけではできません。

在宅死を迎えるためには、医療と介護のサポート制を整える必要があります。


サポートするチームのコミュニケーションが大切

① 在宅医
かかりつけの患者を最後まで看取ろうとする開業医や在宅専門クリニックもある。
決められた日時に定期的に自宅を訪れる「訪問診療」
それ以外の時間に患者の求めに応じて自宅を訪れる「往診」などがある。
必要があれば各種検査を実施し、看護師や薬剤師に指示書を出し、点滴や薬の処方をして患者の健康状態を包括的に管理をする。
緩和ケアの最新技術を学んでいる医師も多く、薬を使って痛みをコントロールしてくれる。
患者が癌や慢性心不全、肝硬変、腎不全などの臓器不全症などに罹っているいる場合は、
病院の専門医との連携をとりながら、患者の在宅療養を支える。

② 訪問看護師
在宅医のクリニックや外部の訪問看護ステーションなどの看護師で、
在宅ケアの医療分野の現場で中心的な役割。
血圧、脈拍、体温を測定し、患者の様子を観察。
床ずれや傷の処置、点滴、薬や医療器具の管理の他
患者の排泄や体の清拭なども行ってくれる。
患者にもっとも接触している時間が長く、家族にも気軽に頼れる存在である。
患者や家族の精神的なケアや、患者や家族のニーズも汲み取って在宅医に伝えてくれる。
訪問看護時に患者の症状に変化があった場合、医師の事前指示書の範囲内ではあるが
自分の判断で対処しなければならないこともあるので、病院看護師よりも症状緩和のための知識や技術に精通。

③ ホームヘルパー
入浴や移動、食事介助、排泄の支援などの身体介護。
買い物や調理、患者の汚れた衣類などの洗濯、部屋やお風呂やトイレなどの掃除などの家事介護。
麻痺により自分で行えない患者には、髭剃りや爪切りなどもしていただける。
ヘルパーには研修を受けて、痰の吸引も可能な人もいる。
患者の様々な要望(例:墓参りに行きたいなど)にヘルパーの仕事を超える場合でも、
追加料金は発生するが、柔軟に対応してくれる介護ステーションもある。
  

④ ケアマネージャー
要支援、要介護の認定を受けている利用者や家族の心身の状況や生活環境に配慮し、
利用者や家族の希望に沿った介護サービスの種類・内容のケアプランを作成する。
月に1回程度患者の自宅を訪問し、利用者に変化がないか確認し、要望をヒアリングする。
利用者の心身の状態の変化や在宅ケアに関する問題があった場合、
「サービス担当者会議」を開催し各スタッフとの意見交換を行う。
その上で、新たなケアプラン作成や話し合いの上での問題解決を助ける。

⑤ 理学療法士
通院できない患者や、医師が認めた場合に、訪問して腕や足などの体の回復のためのリハビリを行う。
寝たきりにならないようにサポートをしてくれる。
利用者の日常動作や自宅の生活動線も観察し、
家具の適切な配置指示や介護福祉用品のレンタルもしてくれる。

⑥ 介護に理解ある家族
家族による介護が可能であれば、できる範囲での在宅療養のサポートをしてもらいます。
特にホームヘルパーの利用回数が少ない場合、家族が入浴や移動、食事介助など日常生活の補助をしますが
やはりそれなりの知識や技術も無いことが多く、かなり重労働に感じることもあります。
家族の中でも中心的な人物が医療や介護のスタッフとの連携が不可欠。
また、本人に判断能力がない場合、本人に代わって延命治療を行うかどうかの判断もすることがあります。

例:介護を受けている本人から
「○○が食べたい」
「○○に行きたい」
「○○して欲しい」
そんなお願いをされたらどうしますか?

その場合、本人の希望をどこまでかなえてあげるか?
十分に各サポートチームのスタッフ内で意思の疎通と考え方の統一を図っておかなければいけません。


意思の疎通を図り、各サポートスタッフ内の考え方を統一しておくために

エンディングノートなどでリビング・ウィルを明確にし、
【自宅で看取る意思】を事前にお願いしておく。
本人の意思表示ができない場合、
最終的には家族の意思をはっきりと伝えておく必要があります。

在宅死については、各スタッフにおいても考え方があり、それを否定的な方もいます。

じっくり話し合い、本人や家族の考えを伝えるようにしなければいけません。

また、どうしても考え方の相違が埋まらない場合、スタッフの入れ替えも考えることもあります。


良い在宅医を探す

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在宅介護ケアチームを作るには、まず良い在宅医を探すことから始まります。

しかし、これは大変です。

「訪問診療」・「往診」・「看取り」までしてくれる医師が患者の近くにいるのかどうか?

新聞や雑誌の記事、書籍、インターネットで調べてみたり、
同じ介護者をもつ方からの口コミも貴重な情報源です。

大きな病院では「地域医療連携室」というものが設置されている事も多く、在宅医療や介護について相談してみることもできます。

在宅専門と謳っている在宅医と巡り合っても、
「看取りはしてくれない」
「往診もしてくれない」
そんなところもあります

できれば、早いうちから情報取集し、何件かの医師に実際に診察を受けてみてもよいと思います。

人間ですので相性もありますし、
信頼できそうな医師が見つかれば在宅介護が必要になるまでかかりつけ医として診察を受け、
日ごろからの信頼関係を築きましょう。

良い在宅医とは、
看取りの実績の多さや
優秀な訪問看護師をスタッフとして抱えており
複数のケアマネージャーや訪問介護ステーションとの連携を持っています。
良い在宅医が見つかれば、その連携ネットワークから、適切なケアマネージャーや他のスタッフも紹介してくれるはずです。


一番辛い決断 本当の最後の時にどうするのか?

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残念ながら、最後の時がやってくる時の対応も事前に考えていかなければいけません。

本人の様態が急変した時
「救急車を呼ぶかどうか?」

これは非常に難しい判断になります。

救急車で運ばれれば、
蘇生措置が行われ、
息を吹き返せば延命治療が始まります。
一旦 延命治療が始まれば簡単にそれを止めることはできません。
※ 過去に家族の希望により延命治療を中止した医師が逮捕されたこともあります。
  また、蘇生処置における心臓マッサージでは、
  骨の脆い老人のあばら骨がぽきぽきと折れてしまうこともあると聞いたことがあります。

エンディングノートやリヴィング・ウィルなどで、
「救急車は呼ばないで欲しい」
と本人に意思表示をしてもらうことも大切です。
※ といっても難しい判断を迫られます。 あくまでケースバイケースで考えましょう。

末期ガンや難病の終末期、老衰
そんな時には「救急車を呼ばない」ということもあり得ます。

たとえ、家族が呼ばないいうにしようと決めていても
ケアマネージャーやヘルパーが救急車を呼んでしまうことも考えられます。

ですから、サポートスタッフ内の意思疎通と考え方の統一が大切なんです。

判断できない場合は、在宅医に相談するように決めておきましょう。

※ 在宅医が同席せずに万一 亡くなってしまった場合
  病気で亡くなったことが明白であれば、死後であっても
  在宅医の訪問を受け死亡診断書を書いて貰うことができます。


「在宅介護ケアはお金がかかるから無理!」という方へ

てくれるかかりつけ医がいない」(31.7%)
第5位 「病状が悪化した時にすぐに病院に入院できるか不安(31.6%)

第3位にランクインしている「経済的手負担が大きい」について考えてみます。


国や自治体には様々な助成サービスが用意されているのをご存知ですか?

・自己負担上限額4万4000円
月収20万円未満、住民課税が「一般所得」の人・・・・・・・・自己負担上限額1万2000円
住民税が非課税の低所得者の人・・・・・・・・・・・・・・・・自己負担上限額  8000円

なお、1ヶ所の病院の支払額合計だけではなく
同じ月内での複数の医療機関での費用や
同じ健康保険に加入している世帯の別の方の医療費が高額であれば
その自己負担額は合算して申請できます。

例:同一の月内において
  在宅医療を2週間受けて支払いが2万5000円
  その後 体調を崩して2週間入院することになり
  その入院費を15万円支払ったとします。
  この場合は在宅医療費2万5000円、入院費15万円の合算して払い戻しの申請ができます。
※ ただし70歳未満の場合は、ひとつの医療機関での支払いが2万1000円以上であることが必要です。


高額療養費の支給申請方法

75歳未満では、加入している公的医療保険に支給申請書を提出します。

75歳以上で後期高齢医療制度を使う場合は、各広域連合から【高額療養費の支給申請のお知らせ】なるものが届きます。
それを市町村担当窓口へ提出します。
申請は初回だけで済み、その後の申請を改めてする必要はありません。


高額介護サービスの支給

介護保険サービスの自己負担割合は1割です。
しかし、1ヶ月単位で利用した額が一定の上限額を超過した場合
申請すれば超過分が払い戻されます。
※ 住民税課税世帯で3万7000円など

なお、この制度は世帯単位であり、
介護保険利用者が二人以上同一世帯にいる場合は
利用者全員の負担額の合計で申請できます。


医療費控除

同一の生計を共にする家族が、年間10万円を超えた医療費を支払った場合
確定申告で【医療費控除】として所得から一部控除できます。

この制度は、
介護サービスの種類によって
支払った自己負担分も控除が受けられることはあまり知られていません。
例1:訪問看護や訪問リハビリなどの医療系サービス
例2:上記の医療サービスに併せて利用した訪問介護や入浴、通所介護の利用
など 色々な控除可能なものがあります。


自立支援医療費制度

高額な医療費が継続的に必要な方が対象になります。

この認定対象に
認知症が含まれていることはあまり知られていません。

認定されれば、支払うべき医療費の自己負担分が原則9割も公費で支払われるようになります。

一度、市町村担当窓口や保健所などに相談してみることもお勧めします。


高額医療費貸付制度

医療費の支払いが困難である場合
医療保険によって無利息でお金を借りることができる制度です。

ご加入の医療保険に確認してみてください。


リバースモーゲージ

まだまだ日本では一般的ではありませんが、
高齢者の自宅を担保として、公的機関や銀行から老後資金を借りる制度です。

死亡時に契約終了となり、自宅を売却して一括返済することになります。

自宅しか資産がない高齢者でも、自宅を終の棲家として最後まで住み続けることが可能になります。


介護ローン

介護資金が必要な方に、金融機関が優遇金利で貸し出してくれます。

申込時の年齢25歳~65歳未満で、安定的収入が見込まれる方であれば
無担保で500万円程度借入できるのが一般的です。


この他にも独自の高齢者福祉サービスを提供している自治体がたくさんあります。

要介護者を対象に
・紙おむつの無料支給
・寝具・布団の丸洗い感想サービス
・訪問理容美容サービス
・住宅改修費の助成
など色々な独自のサービスを自治体が提供しているので
ぜひ調べてみてください。

また、要介護認定がなくても受けられるサービスもあります。

・お弁当を自宅に届けてくれて安否確認をする配食サービス
・電磁調理器や火災報知機の給付
・電話料金の助成
・乳製品の配達サービス
など

ご自分の自治体にどんなサービスが提供されているのか?
市町村の担当窓口や地域包括支援センターに確認してみるのもお勧めです。

お金の問題だけで自宅介護を簡単に諦めないで・・・

このように国や自治体も様々な制度を用意して、介護や看護をサポートしようとしています。

ぜひ色々な制度を活用して、
少しでも経済的負担を減らして
その分 介護に力を入れることができることになればと思っています。

まとめ

私も父や母の介護を経験して

介護・看護・看取りはきれいごとではできない

ということも十分承知しています。

母が亡くなった時に
「これで長年の母の介護から解放される?」
という不謹慎な気持ちも一部 持ってしまった不届き者です。

ただ、
「家に帰りたい!」
とよく言っていた母の言葉が私の心のどこかに突き刺さったままです。

もし可能であれば・・・
少しでも可能であれば・・・
病院や施設よりも長年住み慣れた我が家で1日でも長く暮らさせてあげることができれば・・・

これが、自分自身への反省であり、長々とこの記事を書いた理由です。