地主の悩み

他人に貸した土地(借地権)は地主にとって頭の痛い大問題
だが解決はめちゃくちゃ難しいのです

『自分の土地なのに自分の土地ではない?』
それが昔に親や祖父達が簡単に他人に貸してしまって借地権の発生している土地(これを底地といいます)です。
まわりからは
「あそこの家は昔からの大地主の大金持ちだ!」
なんてご近所さんから羨望の目で見られていても現実は
土地はあっても金は無し!
まして自宅以外が他人に貸している底地(借地権の付いている土地)が大部分なら地主にとって頭の痛い問題です。なぜなら地代なんて毎年地主宛てに請求がくる土地の固定資産税や都市計画税を引いたら雀の涙しか残りません。

私も相続がらみの不動産の仕事をしているのでこの借地というご相談がたくさんあります。
でも、これって解決できるアドバイスもあまりないので
いつも困ってしまっています。

借地人と地主の力関係が大逆転!借地権とは借地人にある日突然に降って湧いた強力な権利なのです

借地権の歴史について少し知っておきましょう。
ちょっとこちらの中国の立退きの例を観ていただけますか?

「おぉぉぉ、やっぱり中国だからこんなことが許されるんだな?」
なんて考えてはいけません。
その昔(といっても数十年前だが)は日本では今の中国と同じような状態だったのです。
ええ、今の中国では
「おい、こら、ここに道路を作るから!建築物を作るから立ち退きなさい!」
と言えば渋々立ち退かないといけません。

昔の日本も同じで、ある日地主がその借地権が付いている土地(底地)を第三者に売却してその土地を購入した新所有者が
「こら、おまえら立退かんかい!」
と言われると対抗する術がなかったのです。
こんな事態を
まるで地震が起きたかのように一斉に建物が無くなることから
「地震売買」とも呼ばれていたのです。
これは大きな社会問題となりました。
そこで政府はある日突然
借地借家法を制定したのです。
しかも借地人のほうにめちゃくちゃ有利に借地借家法を作ったのです。

例えば土地に対する権利の割合は
借地権割合(土地を100とするとその借地人の権利は60%~90%)
底地割合(土地を100とすると地主(底地人)は40%~10%)
という割合です。
各地域でその借地権割合は異なりますのでご興味のある方は国税庁の路線価図で確認しておいてください。
この路線価は相続税の申告における不動産の相続税対象評価額の計算の根拠になるので地主さんなら必見です。

しかも、この借地権はほぼ永久に存続する?とまでいえるような強力な権利なのです。

では、実際に
「もう貸して60年もなるんだからなんとか借地人から土地を返して欲しい!」
という親から借地の付いた土地を相続した方からのご相談例も聴いてみて下さい。


いったん他人に貸した土地(借地権付き土地)はもう返ってこない?
それくらいの覚悟を地主は必要です

このように法律で守られているのが借地人の権利ですから、現実に地主が土地(底地)を返して欲しいといってもなかなかそれは難しい話なのです。

わかります。
先祖伝来の土地
ある地主さんは市内中心部に土地をお持ちだった方はこう嘆いていました。
「戦後焼け野原に投げ出された家族をかわいそうに思って家を建てさせてあげたのに・・・」
と相続税納税のため土地の売却話が出た時に
法外な借地権の権利買取を請求してきた借地人に怒っていました。
その借地はもう住んでいるわけではなく他人に貸して地代の数十倍もの家賃収入を得ているのです。

しかし、法律はそんな経緯など関係ないのも事実ですから、借地人は正当な権利を主張しているだけなのですね。

笑顔の江本

ですから今の法律では
圧倒的に借地人のほうが地主よりも権利が保護されている!
と言わざるおえませんね。



しかし介護や相続が関係してくると借地人のほうも頭の痛い問題もある

借地人も借地の処理に困っている
こんなに借地にしてしまった土地について頭を抱えている地主さんも多いのですが、今は借地人さんの方からもたくさんお悩みの相談を受けています。
それは・・・

親の介護や相続が絡むとその借地の処理に困っている借地人(相続人も含む)

借地権の付いた戸建てってまあ普通はオンボロな古家ですし、借地人自身もかなりの高齢者のケースがほとんどです。
その高齢になってしまった借地人がそのオンボロな戸建てに住み続けることも難しいのです。
現実的に
借地人自身が老人ホームに入ってしまった?
借地人自身が亡くなってしまった?
そんな介護や相続がからむと借地権は借地人にとって頭の痛い問題となるのです。

現実的に売却できないのが借地権付き建物です

もちろん借地権というものはキチンと保護された権利ですから法律的には売却も可能です。
でも、買い手がかなり限られてしまいます。
借地権では住宅ローンも原則つきません。
土地面積も10坪とか15坪程度ですし、連棟のことも多く建て替えも難しく建て替えも地主の承諾が必要です。
また売却に当たっては地主の承諾や新地代のこともきちんと話をつけておかないといけません。
※売却にあたっては地主側が名義書き換え料を請求してきますし、新しい地代は大幅アップすることも珍しくありません。

そもそも200万円とか300万円とかいう売買価格にビジネス的に不動産屋が積極的に仕事を引き受けるでしょうか?
※10万円程度の手数料しか入らないのに交渉ごとや瑕疵担保責任の問題もリスク大です。

返そうにも返しにくいのが借地権

昔の土地賃貸借契約書(借地契約書)には借地返却の項目が記載されていないのも多いです。
そもそもその契約書自体も無いことも多いです。
ですから、あらたに借地人と地主が話し合わないといけません。
「返すならちゃんと建物を壊してから更地で返せ!」
という地主に解体費用もない借地人はどうすればよいのでしょうか?
売れる値段も微々たる物ですし、解体費用は数百万円もかかるし連棟であればお隣さんに解体で大きな迷惑をかけてしまいます。
こんな風景をご近所で見たことがありませんか?

こんな風にトタンで壁を補修していたり、つっかえ棒がしてある所をみたことはありませんか?
たいていこんなところは借地の連棟を解体して地主に借地を返還した場合が多いのですが
連棟はお隣が無くなると雨漏りや傾きがよく起こります。



地主と借地人の相互協力

地主と借地人の相互協力が大事

地主も相続が発生して大きな相続税が発生したら貸している土地(底地)を売却換金しなければいけません。
借地人もそのタイミングを逸するともはや売却できないし、費用を少なくして借地契約を解消することもできません。

土地(底地+借地権)の本来の価値でも
底地だけでは二束三文
借地権だけでも二束三文
なのです。

笑顔の江本

ですから、
借地権の返還を地主が求めてきたら
借地人が借地契約解消の申し出があったなら
できるだけ双方が歩み寄って欲しいものです。