【後悔】二世帯住宅の悲劇

子供から「そろそろ同居しないか?」という提案に嬉しさのあまり同居を決意する親御さんも多いです。
でも、そこにはしっかりとした話し合いや確認することってたくさんあるのです。
悲劇の二世帯住宅で後悔してももう遅いのです。
同居は結婚と同じです。
一緒になるより別れるほうが何倍も大変なのです。

【二世帯住宅の悲劇】始まりは「子供のところに引っ越すのでこの家、売ったらおいくら?」の電話だった。

相続対策専門士江本圭伸

査定依頼の相談はハナさん(仮称 73歳)からでした。

お話を聞くと、数年前に買われた新しく綺麗な建売住宅でした。

家族構成は長男夫婦とその子供1人 そしてハナさんの5人家族
間取は4LDKで
「少し狭いのかな?」
というのが売却理由と最初は考えていました。

登記簿謄本を調べると所有者はハナさんでした。

お話を聞くと
高齢になってきて
都会で暮らしている長男家族との同居を決心したために、
買ったお家だそうです。

長男さんはハナさんにとって一人っ子でサラリーマン45歳

都会で働き、結婚もして子供も1人 います。

最近の不景気で数年前に転職をしたせいか、お世辞にも年収は高くないようです。

住んでいる家も当初、狭い賃貸マンション(2LDK)だったらしいです。

もちろん、貯金もほとんどありません。

ハナさんのご主人はすでに亡くなっています。

ひとり気楽な生活をしていたハナさんでしたが
やはりこれからの老後の生活にも不安がありました。

ハナさんの住んでいるところは、
四国の田舎でした。

そんな時
ハナさんは風邪をこじらせ肺炎を発症し、家からかなり離れた総合病院に入院したことがあったそうです。

「そろそろ、大阪で一緒に暮らさないか?」

そんな言葉を見舞いに来た長男から聞いたとき、
ハナさんはすごくうれしかったそうです。

そして、ハナさんは長年住み慣れた田舎を離れ
長男家族との同居生活を始めることを決心したそうです。

しかし、今の息子の狭い賃貸マンションではとても同居生活なんかできません。

そのため、実家や他に所有していた不動産すべてを処分して、
大阪の住居購入資金に充てることにしました。

地元の不動産屋に聞けば
3千万円程度にはなるということでした。

田舎の3千万円の不動産といえば
どれほどすごいものかはご想像がつくかと思います。
これとハナさんの貯金を合わせれば、かなりの金額です。

高齢者の喜び

その旨を息子に伝え、新居の手配をさせることにしました。

税金(贈与税)の問題もありますから、
購入資金を出したのはハナさんですから、もちろん名義はハナさんです。

田舎の実家はそこそこ広さがありましたが、
都会での暮らしは狭くなるのはやむおえません。 
ですから元の家にあった家財は持っていくことができないことがわかっていたので
そのほとんどを処分してしまった。
ということでした。

【二世帯住宅の後悔】新しい住宅探しの件はほとんど息子任せ

子供の学校の関係や職場への通勤なども考えて
市内中心部に近い建売住宅を息子達は探してきました。

契約時にはまだ建物はなく、
建物はこちらの要望どおりに建てることができるという売り建て方式での契約でした。

※注文住宅ほどではないが、ある程度の希望は実現できます。 
 しかし、現実には洋室を和室にするという変更程度です。
 新たなプラン変更はオプション扱いで価格が増額されてしまいます。

とりあえず田舎の家などは全て処分し、しばらくは親戚の家に身を寄せていたらしいです。

そして、新しい家も完成し無事に引越しを済ませました。

ところが、いざ住み始めてみると・・・

今回の物件は、よくある都会の三階建の建売住宅です。

1階は和室と風呂とトイレ

2階はリビングルーム

3階は息子夫婦とその子供の寝室です。

いたって普通の物件です。


もちろん
ハナさんのあてがわれた部屋は
1階の和室の1室です。高齢者の悲しみ

確かに高齢のハナさんが何度も昇り降りするのはつらいと思います。

しかし正直 北側玄関で日当たりは決して良いとも言えません。

ハナさんが住んでいた田舎の家は、使わない部屋もたくさんあるような大きなお家でした。

庭には大好きな花を一生懸命育てていたそうです。

そんなところに長年住んでいたハナさんにとって、
今の環境はとても受け入れられるものではなかったようです。

まして、足の少し悪いハナさんは、家族団らんである2階のリビングに行くのも一苦労
しだいに食事さえもハナさんの部屋の1階和室で独りですますことも多くなってきたようです。

「こんなことなら、多少不便でも田舎にいたほうが良かったわ!(涙)」
といっても後の祭りといってしまえば、ハナさんが可愛そうですね・・・





田舎の家は平屋で、こんなことはなかったようですが

都会でハナさんが住んでいたような環境と同程度の広い土地の物件であれば
数千万いや億に近い大豪邸になってしまいます。

ハナさんの思い描いていた長男家族との同居生活と現実かなり食い違いのあるようでした。

1階の和室
(これも本来 洋室の予定をハナさんのために和室にしたとは息子夫婦の弁)
に独りでいることの多いハナさん。
 
ほとんどの荷物は処分して、都会に出てきたので
がらんとしているらしいです。
ご主人の仏壇も持って来れなかったことをすごく後悔されていました。

そんな時 日頃のストレスからか長男家族との大喧嘩

なかなか都会にも馴染めなかったのかもわかりません。

人間関係の希薄な都会です。

新たに友達を作ろうと考えても、容易なことではありません。

ちょっとしたことから、息子夫婦と大喧嘩があったようです。
※ 原因はさずがにここでは書けません。
  ハナさんは売却の話はそっちのけ・・・
  延々 ご家族の愚痴を聞くのに約半日が費やされました。

少しだけ書くと

高齢者の方と若い方の生活サイクルは大きく異なります。
※ハナさんは夜9時には寝て、朝は5時ごろ起きるそうです。
嫁姑は程よい距離があれば、うまくいくものですが
いざ同居になれば話は別ですよね。
※ハナさんはお嫁さんのつくる食事にもかなり不満があるようでした。

それが私への物件売却の査定依頼の理由でした

しかし、私どもの出した売却査定価格は・・・

とてもハナさんの希望の金額(購入した価格)を提示することはできませんでした。

周辺には、売れ残っている建売住宅も多く、大幅な値下げ合戦です。

まして、大きめの建売住宅を買う客層なら
土地から建ててしまいます。

また一度住めば、あくまで中古住宅としての査定にならざるおえないのです。

売却価格の説明の後、ハナさんには内緒で長男さんと少しお話をしました。

ハナさんはやはり寂しさを感じていたのではないでしょうか?

で、今回のお話は私には無駄骨でしたが、
売却は取りやめ、ハナさんのお部屋を日当たりの良い長男さんの子供と入れ替えることにしたそうです。
また、地元のコミュニティ(老人会)への参加もお嫁さんが積極的に参加を促すようにしているようです。
※ あれだけ話好きなハナさんですからきっと人気者になっているのでは・・・?

二世帯住宅の失敗を後悔してももう遅い|子供との同居、親との同居は慎重に!かつタイミングも大事

都会の不動産と田舎の不動産ではそもそも別物です。

一戸建住宅はお年寄りに優しくないことをお忘れなく!
私は、高齢者の方にはマンションをお奨めしています。

そして、まだ動けるうちは「子供との同居」より、
「スープの冷めない距離」がやっぱりベストでは・・・?

やはり今のニューファミリーと高齢者とでは
生活サイクルも異なる!
食生活の嗜好も異なります!

ですから、
同じ棟内の階の違う分譲マンションを2室まとめて買っていただく!
そんなケースが増えてきましたね。
これなら、生活サイクルの違いも食生活の違いも気になりません。
長男のお嫁さんも買い物を手伝う程度で楽チン?かもしれません。

くれぐれも同居生活を考えるときは慎重になってくださいね。

追伸

購入すると税務署から資金の出所を確認する「お尋ね」がきます。

ですから、資金の出所が不適切であれば贈与税がドカンとかかってくる恐れがあります。

ですから、名義は資金提供者の方にしておいてくださいね。