相続で遺産分割協議が難航!
まあ、いろいろスッタモンダはあったにせよなんとか無事に相続手続きも完了!
ほっとしたのもつかの間、相続後に?遺産分割協議も終わったのに?再び他の相続人がゴネ出したらどうします?

意外とよくあるのが相続のやり直し!遺産分割協議後でも?相続手続きが完了後でも!再びやり直しを主張する相続人


一度決まった遺産分割のちゃぶ台返し!
あとからなんちゃらかんちゃらクレームをつけてくる相続人も少なくありません。
もちろん、気が変わるのは人間ですからあることですが、遺産分割協議書にきちんと実印を押して印鑑証明まで添付したのにあとで「やっぱり納得できない!」「気が変わった!」と主張されたらどうしますか?

そんな例をみっつほど介しておきます。

遺産分割協議の内容をよく知らずにハンコを押した!あの時は親が亡くなって悲しくて正常な判断ができなかった

私のほうにもたくさん寄せられるご相談です。
「よくわからずに遺産分割協議書にハンコを押した」
「あの時は親が亡くなって悲しくて悲しくて考える気力も無かった」
なんて言われるのですが正直そんな世の中 甘くないですよ。
遺産分割協議書に実印まで押したのにそれは通用しません。

相続の時に建物を解体する約束をしたのに解体しないから遺産分割は無効だ!

う~ん、確かに親戚の方に遺産分割話に立ち会ってもらうのも良策とはいえるのですが時と場合にもよりますね。(汗)
「もしこの念書を守らないとこれを裁判所に持っていけば遺産分割は無効になる!」
なんていうのはちょっと理解できないです。
遺産分割協議に立ち会ってくれる親戚が利害関係人になる場合は気をつけたほうがいいですね。

「遺留分」ということを後から知ったから今から遺産分割をやり直せないか??

テレビや週刊誌で相続の記事があって新たな相続に関する法律を知ることがあります。
今回のケースは「遺留分」の勘違いです。

おそらくこのケースでは自分の不平不満があったにもかかわらず遺産分割協議書にハンコを押しているような気がします。じゃないと株式の名義変更などはできないともいますからね。
私に寄せられるご相談でも
「よくわからないでハンコをおした?」
「何も考えずにとりあえずハンコを押した!」
と言われる方がどれだけ多いことか・・・(汗)
でも遺産分割協議書にハンコを押すということがどれだけ重いことかをあまりみなさん理解していないような気がします。「ハンコを押す」=「それで納得OKしました」と法律上は認められることなんです。
さらに、親が「自分の遺産をどう相続させたい」かを遺言書まで作っているのにそれを尊重しないのもちょっと虫が良すぎるような気がします。

しかし、そのために「遺留分」というものがあるのですがそ権利を行使できるのは
遺留分が侵害されたことを知ってから1年間、もしくは亡くなってから10年以内に主張しなければいけません。

いったん遺産分割協議が成立したら「諦めてください」or「安心してください!」そう簡単に遺産分割や相続手続きはやり直ししはできません!

後からコロコロ遺産分割の内容を変更されては他の第三者に多大な損害を与えかねませんし、法律もそれを防ぐために遺産分割協議には厳重な要件を備えるように定められています。
遺産分割協議を相続人全員で行なわなければいけませんし、だれかひとりでも反対すれば不成立です。
それをしっかりと確認するために遺産分割協議書は自署と実印(印鑑証明書添付)させているのです。
と自署意を作成して、通常は相続人それぞれの実印を押印して印鑑証明書を添付します。

ですからいったん遺産分割協議が成立したらそう簡単にはやり直しはできないのです!

遺産分割のやり直しができるケースもある

ただ「いったん成立した遺産分割協議は絶対にやり直しができないのか?」といわれればそうでもありません。特殊なケースであれば遺産分割協議はやり直しができることもあります。

遺産分割協議書に記載されていない遺産が新たにでてきた

遺産分割協議が成立した後に新たな遺産が見つかった!という場合もあります。
その場合は新たな遺産部分についてのみ、再度遺産分割協議が必要になります。
相続に強い司法書士や弁護士ならそんなケースも踏まえて
『この遺産分割協議書に記載がない遺産や、後日、新たな遺産が見つかった場合は相続人◎◎が相続する』
と一文入れるものです。

新たに見つかった遺産が多すぎる?(遺産隠し)場合は遺産分割もやり直しに

新たに見つかった遺産が遺産全体に占める割合が大きいのであればの最初の遺産分割協議を無効と家庭裁判所が認める場合もあります。

相続人全員が合意すれば遺産分割はやり直しができるが「贈与」とみなされることもある

このように遺産分割協議はいったん成立したら、それをやり直しことは簡単ではありません。
しかし、
相続人同士のわだかまりが解けた(誤解していることもいいです)
当初は意固地になっていたが時間が経てば他の兄弟たちの主張も許容できるようになった(怒りの感情を鎮めるには時間も必要です)
などの場合、遺産分割協議をやり直すことはできますが遺産分割のやり直しは相続人全員の合意が必要です。

ただここで気をつけないといけないのは遺産分割には「民法」と「税法」がありそれぞれ考え方が異なります

「税法」ではいったん遺産分割協議で確定した名義から新たな名義に移ることは「贈与」とみなされます。
相続税率に比べ贈与税の税率はかなり高いのでくれぐれもご注意ください。

このように後々に問題が起こらないように遺産分割協議は十分に検討をして納得してから作成するのが重要です。
遺産分割は相続に強い専門家(弁護士・司法書士)の意見を聞いて後々の問題の発生を防ぐようにするのが賢明です。
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遺産分割は「ちょっと損?」くらいがちょうどいい

私は「相続でもめない?」「ずっと仲の良い兄弟姉妹であり続けてほしい!」と考えていますし天国のお父さんお母さんもそう願っているに違いないと思います。
法律上の相続割合はこうなっているから・・・?
遺言書ではこう書いてあるから・・・?

そんなことに固執すると相続はうまくいかないものです。

多く遺産を相続する人はちょっぴり減らす!
少なく遺産を相続する人はちょっと増えただけで納得する!
それが円満な遺産相続のコツだと思います。

きれいごとでは相続はまとまらないのも現実(特に不動産は!)

私はできるなら「不動産を相続したなら売却を考えるべし!」とたくさんの相続トラブルに遭遇して考えるようになりました。
こんなわずかな遺産でドロドロの裁判沙汰の相続トラブルになる!少ない遺産相続ほどよくもめるという現実

相続不動産をお金に換えて少しだけでもいいから他の相続人に分けてあげる。

わずかな金額でももらえる分が増えれば他の相続人も納得できます。(ええ、それは表面上だけかも知れませんが)

あなたが相続した不動産がそこにある限り、他の相続人の不平不満や怒りが何度でも蘇る

他の相続人が実家の前や近所を通るたびに遺産相続の不平不満や怒りが蘇ります。
あなたがそこに住み続ける限り、その怒りは収まらないのです。
だから、売却してその存在そのものをリセットしてしまうこともお勧めしています。

笑顔の江本

いつも皆さんにお話しているのは
相続は「今までの!」そして「これからの?」兄弟姉妹関係の清算
でもあります。自分勝手な主張ばかりする他の兄弟姉妹と仲良くし続けるのにも我慢がいります。いっそ縁を切る覚悟も必要かもしれません。
これはたくさん遺産相続する人にも少なく遺産相続する人(ひょっとしてゼロ?)にも言えることではないでしょうか?

親との同居・介護の約束を反故にした遺産分割はやり直せるか?

ではこんな場合は遺産分割のやり直しはできるのでしょうか?
それは遺産分割当時の約束をその相続人が守らない?!というケースです。

遺産の大半を相続した長男は母との同居や介護が条件だったのに?

a1070_000109長年連れ添った伴侶を亡くした悲しみで、一気に元気の無くなった母親。

「このままでは心配だ?」
相続の遺産分割協議の時に、高齢の母の面倒をみると約束した長男の兄。
その苦労や金銭的負担を考えて、他の子供たちは相続財産の配分で
大半を長男である兄に相続させることにしたのだが・・・

同居・介護は予想通りにいかないことも珍しくないのですよ!

このブログでも親との同居や二世帯住宅、介護について
わざわざテーマを設定してまで書いています。
二世帯住宅(親との同居)
介護

その理由は、
同居や二世帯住宅、介護は大変ですし、
生半可な覚悟ではできないからです。

「お袋の面倒は俺がみるよ!」

そう言い出したのはきっと親孝行の気持ちからでしょう。
しかし、同居や介護は自分一人ではできません。
親がまだ元気なうちは、嫁姑問題が・・・
親の身体が弱ってくれば介護が・・・
いきなりドシッとのしかかってくるのです。

まして、一番苦労するのはそのお嫁さんです。

いくら親とはいえ、しょせん義理の関係です。
同居は気苦労がたえないでしょう。
介護の大変さはやっていない人にはわかりません。
きっと
「どうしてそんなことを言い出したの!」(怒)
と、夫に愚痴のひとつも言いたくなるものです。

たとえ、遺産分割でたくさんの相続財産が手にいれても
それが割に合うかどうかはわかりません。

他の子供たちに、文句ばかりこぼしている親

どんなに献身的に面倒をみても、介護をしても
なにかしら不満がでてくるものです。
また親のほうも、
「自分のことをもっと気にかけてほしい」
という気持ちからか同居の家族の悪口を他の子供に言うものです。

他の子供たちは親の不満を真に受けて、
「これでは母さんがかわいそうだ!」

「せっかく遺産をたくさん相続したのに、
 きちんと面倒をみてくれないなんて、これでは話が違う!」

そんなことで、もめだすこともあるんですね。

同居を条件に長男の兄に遺産を多く相続させたのに
「よくある嫁姑の問題で、離婚寸前にまでもめてしまった」
そんなこともあります。
「介護の大変さに初めて気づいて、音をあげてしまった!」
そんなこともあります。

ですから、当初の思惑通りに進まないことも考えておかなければいけません。
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約束を守らないので、遺産分割はやり直せるか?

よくあるケースが、
高齢の母親の同居や介護を条件に、多くの遺産相続を子供の誰か一人がした場合です。
しかし、
母親とその家族(特にお嫁さん?)との折り合い
介護に音をあげ、介護施設に放り込んだしまった。

そんなことから他の子供たちから文句をいわれることもあります。
そこで、遺産分割はやり直せるのか
という問題が出てきます。

親の面倒(親の扶養)をみないのは債務履行か?

「約束が違うから、遺産分割協議をやり直そう!」
と他の子供たちから申し出があっても、
「そんなことには応じれない!」
「こっちも精一杯努力したんだからしょうがないじゃないか!」

と遺産分割のやり直しを承諾してくれないことがほとんどでしょう。

この場合、もはや再度の遺産分割協議のやり直しはできません。

平成元年2月9日最高裁判所の判決にこんなものがあります。

親を扶養するという債務の不履行が問題になった事案について
「遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、
その後は債務を負担した相続人と、債権を取得した相続人の間で
債権債務関係が残るだけと解すべきであること
遡及効を有する再度の遺産分割を余儀なくすると、法的安定性が著しく害される。」

これらを理由に
遺産分割協議の法的解除は否定されています。

では、相続人全員が遺産分割のやり直しに合意した場合はどうなるのでしょう

「兄さんに相続財産の大半を渡したのは、
 おふくろの面倒をみるっていう約束だったからじゃないか!」

「そうだな。すまない。
 うちのヤツとおふくろがどうしてもそりが合わなくて、
 ほとほと困ったよ・・・
 当初の予定とはずいぶん変わってしまったのは仕方がない。
 では遺産分割をやり直そう!」

そんな風に、話が進んだ場合はどうなるのでしょうか?

民法上はやり直せます。

平成2年9月27日 最高裁判所判決では

「共同相続人の全員が既に成立している遺産分割協議の全部または一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をなしうることは、妨げられるものではない」

と述べています。

税法上はやり直せない

「初の遺産分割協議により共同相続人または包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は分割協議により取得したものとはなりません。」
(相続税法基本通達19の2-8)

どういうことかというと、
いったん遺産分割協議で相続財産を配分したのに
後からそれをやり直して再配分するということは
贈与や交換などにあたるということです。

そのため、相続税以外に新たに税金がかかることになります。

このことに、前述の通達の解説があります。

「一般的には、共同相続人間の自由な意思に基づく贈与又は交換等を意図して行われるものであることから、その意思に従って贈与又は交換等その態様に応じて贈与税又は譲渡所得税等の課税関係が生ずることになります。」
(相続税法基本通達19の2-8の逐条解説)

改めて遺産分割したら譲渡所得税や贈与税がかかるということです。

ですから、遺産分割協議はしっかり考えて決断しなければいけません。

しかし、遺産分割をやり直せることもある

「もっとも、共同相続人間の意思に従いその態様に応じた課税を行う以上、当初の遺産分割協議後に生じたやむを得ない事情によって当該遺産分割協議が合意解除された場合などについては、合意解除に至った諸事情から贈与又は交換の有無については総合的に判断する必要がある。」
(相続税法基本通達逐条解説通達起案者又は後任者の(19の2-8)解説)

相続対策専門士江本圭伸国税庁がこのような解説を付け加えてきたということは、
ケースによっては遺産分割協議のやり直しを税法上でも
認めるようになりつつあるのかもわかりません。

しかし、通常はなかなか認められないと思いますけどね。

また、そもそもの遺産分割協議による相続財産の取得について
無効や取り消すべき原因がある場合には、その相財産の帰属そのものに問題があるので
これについての遺産分割のやり直しできるのではないか?
とも考えていますが、
ここまでくれば弁護士や税理士の専門家の範疇ですので
ぜひ専門家にご相談してください。