「嫁に行った娘には実家の相続権なんかないんだから余計な口は挟むな!」
そんな風に実家の遺産相続の話から除外される娘さんからのご相談もよくあります。
という質問があります。
これには法律的な点からは間違いであり娘であろうと息子であろうと同じ平等な相続権があります。ただ各家庭のさまざま事情や経緯からでなんとも言えない部分も正直あります。
【結論】嫁に行った娘でも実家の相続の法定相続人である
外に嫁いだ娘だから・・・
戸籍も抜いているから・・・
そんな誤解もあって「外に嫁いだ娘には相続権はないのかも?」と誤解されるかもしれません。
結論から言うと
外に嫁いだ娘であっても何ら関係なく相続権は同じ
です。
息子であろうが娘であろうが隠し子であろうがみんな子供は相続人であり、その相続割合は同じです。
確かに法律的にはそうなのですが、法律だけで問題解決できないのが遺産相続でもあります。
嫁に出た娘のハンコがないと実家の相続手続きもできない
実家の遺産相続の話から「のけ者」にされている娘さんからは
「このままだと遺産が勝手に分けられてしまうのでは?」
と不安になるかと思います。
ただ原則的には
・不動産などの登記名義人の変更
・預金の凍結解除
など相続手続きには相続人全員の署名捺印した書類(遺産分割協議書)が必要です、
これには誰かひとりでも欠けるとできません。
ですので、外に嫁いだ娘さんであってもその方の署名捺印(実印と印鑑証明)がないと遺産分割はできません。外に嫁に行った娘の知らないうちに遺産相続手続きが行わえることはありませんので安心してください。
ただし、遺言書などがあれば別ですけど・・・・
遺言書で「息子に全財産を相続させる」と書いてあっても娘には遺留分がある
法的に有効な遺言書があれば相続手続きはそれだけで粛々と進めることができます。
「息子に全財産を相続させる」とたとえ遺言書に書いてあったとしても、外に嫁いだ娘には最低限保障された相続の権利(遺留分)があります。この場合は法定相続分の半分になります。
親が遺言書まで書いているような遺産相続であれば、嫁に出た娘でもある程度はその遺志を尊重すべきかもしれませんが、どうしても納得できない場合は遺留分減殺請求を考えてもよいかもしれません。
嫁に行った娘に相続させない!という「家督相続的考え」の息子(長男)の言い分
法律的には息子も外に嫁いだ娘もなんら変わりない同じ相続人です。
確かに「外に嫁に行った娘には実家の相続は関係ない!」という息子(長男)の言い分は間違っています。でも、息子(長男)がそんな主張をするのにも理解できる部分は少しはあります。
親からの期待を受けてきた息子(長男)
昔気質の親であれば、やはり跡継ぎは息子(長男)と考えることでしょう。
息子は小さい子供のころからそのことを直接的にも間接的にも親からそう言われていることでしょう。
「おまえは長男なんだから、もっとしっかりしろ!」
「長男のお前がこの家をしっかりと守っていくんだぞ!」
昔ながらの『家督相続』という考え方はいまだに根強く残っているのもまた現実なんです。
特に田舎の地方では顕著です。
「うちは本家で、あっちは分家」と分けるくらい「家意識」は高いものです。
実家の祭祀継承は息子(長男)の義務|お墓を守っていく・法事もずっとしていく
これからもずっと「家」を守っていく息子(長男)ならもちろん「墓守」「法事」など祭祀継承をしていかなければいけません。
それには費用や労力もかかってきます。
そんな苦労を考えたら、
「外に嫁いだ娘には相続は関係ない!」
「親からの遺産は息子が引き継ぐのは当たり前!」
という意識になるのも少しは理解できます。
義両親の介護をしてきた嫁への罪悪感
必ずしもしそうだとはいえませんが
そんな家督相続的意識がある息子(長男)であれば、やはり親の介護をするのが息子(長男)の務めと考えて親の介護に尽力してきたかもしれません。しかし、その親の介護を事実上するのは主に息子の嫁(長男の嫁)でもあります。
そんな義両親の介護をかいがいしく献身的にしてくれた嫁への感謝や罪悪感もあってか
たとえ「法律的に子供はみんな平等」であっても「息子(長男)の俺が相続する」という主張をするのかもしれません。
娘の主張「そんな偉そうにいえるほど介護じゃなかったのに?」
きっと娘のあなたなら
「そんな親の介護をしてきたっていえるほどの介護じゃなかったわ
いつも母さんたちはお義姉さんの悪口や愚痴ばっかり私に涙ながらにこぼしていたんだから!」
と思うかもしれません。
しかし、現実には
・高齢者は誰でも「意地悪ばあさん」「頑固ジジイ」になります。
・高齢者はみんな自分を「悲劇のヒロイン」を演じます。
・介護の苦労は介護した人にしかわかりません。
ということがあります。
介護の不公平が一番遺産相続トラブルの原因でもあります。
このあたりは週刊文春でもお答えさせていただきました。
嫁と姑は親子といってもしょせんは義理の関係。
そのことは外に嫁いだ娘のあなたも義両親との関係を振り返れば理解できるはず。
嫁姑問題はどこの家庭でもあるものです。
「農家」や亡くなった親が社長なら「事業承継」に大きな問題
よく愚かなことをする人に「このたわけ者が!」ということがあります。
この「たわけ者」の語源は「田分け者」と聞いたことがあります。
つまり、田を分ける者
昔の農家の場合は、相続があるたびに田を分けていてはどんどん小分けの規模縮小になっていきます。そうするとその農業自体が成り立たなく衰退してしまう。だから「田を分ける」ことは「愚かな行為である」ということです。このあたりから昔から「家督相続」(長男がすべて親の遺産を引き継不)の考えになっていったのかもしれません。
これは会社経営でも同じです。
「田畑」を「株」に置き換えれば同じ理屈です。
農業
商売や会社経営
これはやはり平等な相続では存続が危ぶまめるのもまた現実です。
実家の相続問題の解決策は「家」を守っていく息子(長男)の顔を少しだけ立てる相続かも?
確かに、都合の良いことばかり主張する息子(長男)であれば、対等の相続権をこっちも主張してもかまわないかもしれません。
ただ、
・今までの経緯や事情(親の介護・事業承継)
・生前の親の考えや思い
など、そこにいくらかでも考える余地があるのならばまったく同じ相続でなくても納得できるかもしれません。
法律上の解決策は同じ相続権を主張することだが?
確かに法律では息子であろうが外に嫁に行った娘であろうが同じ相続割合を持つ法定相続人です。
そのことをしっかりと主張することは決して間違いではありません。
ただ、息子(長男)が主張することにも少しだけ耳を傾けてあげて欲しいのです。
わずかな遺産で骨肉の兄弟姉妹の遺産争いは天国のお父さんやお母さんも悲しむことでしょうし、弁護士費用もバカにならない
もう家庭裁判所にまで調停を申し立てることになればほぼ100%その後の付き合いはなくなります。
一度崩壊した兄弟姉妹間の関係の修復はまず無理なことも覚悟してから調停は決断してください。
参考:普通の人は相続争いの調停・審判がどんなものか知らないですよね?
また弁護士の先生の力を借りるともなると、やはりそれなりの出費も覚悟しなければいけません。
「相続でもめてるんだけど、弁護士に相談するといくらくらいうかかるの?」 こんなご相談が結構多いです。 しかし、弁護士報酬は各弁護士事務所によってまちまちです。 例えば優秀や有名(行列のでき法律相談所なんかに出演?)な弁護 …
「嫁に行った娘」vs「跡継ぎ息子(長男)」で実家の相続を徹底的に争うか?譲歩するか?
外に嫁に出た娘 vs 息子(長男)で徹底的に争うか?
あるいは、そこそこの譲歩をするか?
それは各個人が考えて結論を出すことであって部外者の私たちにはなにも言えません。
ただ、ある程度の譲歩案も外に嫁に出た娘から提案することで解決できたこともありました。
参考:【相続の話し合い】は法律と不動産に詳しい第三者を入れると良い
参考:なぜ親の家(実家)の相続が兄弟でもめやすいのか?住むvs売る
外に嫁に行った娘がどんな主張をしてくるかわからないから、息子は遺産を隠す!
外に嫁に行った娘であるあなたは
「ある程度は譲歩した遺産分割案でもかまわない」
と考えているかもしれません。
息子(長男)のほうも
「全部 俺が相続するとは考えていないし、少しは遺産を分けてもかまわない!」
と考えているかもしれません。
でも、それをお互いが言い出さないからずっとにらめっこ状態で兄弟姉妹関係がギクシャクしているかもしれません。
互いに腹の探り合いの疑心暗鬼を修復しないとなかなかうまくはいきません。
そんな状態だからこそ
「外に嫁に行った娘に実家の遺産のことは一切教えられない!」
という遺産隠しが起こります。
実は外に嫁いだ娘にとって実家の遺産を調べることはかなり大変なんです
「親の遺産を調べることはできませんか?」
というご相談も多いのですが私の回答は
「かなり大変です!」
とお答えしています。
実家の土地建物など不動産なら割と簡単に調べられますが、銀行の預金や株式になるとかなりハードルが高いのです。
弁護士からの相続財産を調べることのアドバイスです。
誠に辛いことを言わなければいけませんが親が亡くなっても悲しむ暇はあまりありません。 なぜなら親がどんな財産を持っていたのか? 相続財産の調査をすぐにでも始めなければいけないのです。 相続税の申告期限はわずか10ヵ月 相続 …
外に嫁いだ娘の実家の相続の選択は3つ|徹底的に争う?待つ?譲歩する?
外に嫁に行った娘の実家の相続での選択は3つあります。
・徹底的に争う
・待つ
・譲歩する
徹底的に争う
外に嫁に行った娘も息子も法律的には同じ相続権を持つ法定相続人です。
ですから、そのことを主張して「徹底的に兄弟姉妹なんで争うか?」という選択もあります。
ただ、主張してばかりではなんの解決にもならないことも多いです。
相手が行動を起こしてくれなければ何も変わりません。
そのためには家庭裁判所に調停の申し立てをしなければいけないかもしれません。」
待つ
先にもお話ししたように相続手続き(登記名義変更など)は相続人全員の署名捺印が必要になります。
相手が何かの事情で、相続手続きの書面(遺産分割協議書)を外に嫁に行った娘にも署名を頼んでくるかもしれません。
その時に初めて強気の交渉にでることも得策かもしれません。
ただ、
・それがいつになることやら?
・いつかわからない1000万円より今の500万円?という考え方
もあります。
譲歩する
確かに不本意ではあっても、ある程度の譲歩した遺産分割に応じることも得策な場合があります。
むちゃくちゃな主張をしてくる相続人に常識は通じません!
そんなモンスター的相続人とずっと遺産分割の話し合いを続けていくのは精神的にも大変です。
いっそのこと損した遺産相続分を兄弟姉妹間の縁切りの「手切れ金」と思って諦めたほうがよっぽど簡単です。
なぜなら、そのままズルズルと問題を先延ばしにするといずれは次世代(子供たち)をその遺産相続トラブルに巻き込むことになるのです。
しかし、その判断は簡単ではないですよね?
まずはしっかりと親の財産の把握から始めましょう。
特に意外と実家などの不動産が思ったほどの価値は無かった!?
ということも多いんです。
■いくらネットで検索しても無駄です
相続のもめごとは百人いれば百通りで同じケースはありません。
だからネットでいくら解決策を探していてもあまり意味はないのです。
遺産分割で納得できないが自分の主張が正しいのか?間違っているのか?
そんなモヤモヤを抱えたままずっと悩んでいるよりも弁護士に相談するのが解決の早道です。
「相続弁護士ナビ」では、全国の相続に強い弁護士の情報をご提供するサイトです。
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