遺産相続と長男の嫁
嫁ぐ相手が長男だった?
ひょっとしたら結婚当初そのことに一抹の躊躇や不安を感じてしまいませんでしたか?
そして、いざ結婚してからはそんな不安はいつのまに忘れていたと思います。
しかし、それが数十年後にまさか現実のものとなるとは思ってもいなかったでしょう。
今さら長男に嫁いだことを後悔しても後の祭りです。

義両親の介護では「長男の嫁だから」と言われ
遺産相続では「今の時代は長男だからというのは古い考え」と言われ
そんなご都合主義ばかりを主張する義兄弟姉妹に長男の嫁のあなたはもう爆発寸前かもしれません。
だからこそ長男のお嫁さんに知っておいて欲しいことがあります。

このままずっと長男の嫁を続けるか?やめるか?の決断するために

相続の法律を正しく理解しておきましょう
(長男の嫁は報われにくい?という現実)
義実家の財産を把握しておきましょう
(いざとなった時にお金の問題は避けられません)
義両親の介護の状況をきちんと他の義兄弟姉妹に伝える努力をしておきましょう
(あくまで恩着せがましくならないように)

長男の嫁は損?親の介護は不公平でも遺産相続は兄弟みんな平等で特別寄与分は認められにくい現実

長男の嫁の怒り
年老いてきた義両親にそろそろ介護が必要になってきた。
義両親のどちらかが大病(癌・脳梗塞・認知症。転倒骨折etc)を患った。
そんなことをきっかけに義兄弟姉妹たちが親の介護について話し合った時にまっさきに頼りにされるのが長男ではないでしょうか?
まだ義両親両方が健在の時にはその負担もまだなんとかやりくりできるかもしれません。
問題は義両親のどちらかがが亡くなって片親になった時にその負担が長男家族に一気にのしかかってきます。
実質的には「長男家族=長男の嫁」ですからその負担はつまり長男の嫁の負担となるのです。
参考:片親になってからの介護と相続ほど大変で報われずよくもめる理由

そして、献身的な長男の嫁の介護もむなしくその片親も亡くなった後の四十九日法要や一周忌の場で
兄さん、お義姉さん いろいろと親父やおふくろの面倒をみてくれてありがとう」(義弟)
お義姉さん、父さんや母さんの介護は大変だったでしょ、これでゆっくりできるわね」(義妹)

そんなねぎらいの言葉の後に
ところで遺産のことなんだけど、兄弟姉妹で均等に分けようかと思うんだけど?(義弟・義妹)
そんな突然の申し出に驚いて口を挟もうとすると
これは私たちの問題だからお義姉さんは黙っててくれませんか。
 お義姉さんは法定相続人でもないんだから
」(義弟・義妹)

実は多くの方が勘違いされているのが特別寄与分の現実なんです。
いくら介護に尽くしてきてもそれが特別寄与分として遺産相続で認められるのはすごくハードルが高いのです。
なぜなら人は
「自分のしたことは過大評価し、他人のしたことは過小評価する」
「特別寄与分は相続人全員が話し合って決めるもの」
だからです。

笑顔の江本

こんな話はどこにでもあるお話です。
この再現ドラマを観て笑えるあなたは少し楽観的すきますよ(汗)

お金の魔力ってすごいのです。
簡単にダークサイドに堕ちていってしまうのが人間の本性なのです。
だからきれいごとで介護や相続のことは考えてはいけないのですよ!

【大問題】長男の夫は「自分の親の介護」と「遺産相続」には無関心で嫁は大変

自分の親の「介護」と「相続」に無関心な夫
身も心もボロボロになるような介護を義両親に長男の嫁が捧げていても時には心が折れるものです。
そんな時に
パパ、◎夫(義弟)や●子さん(義妹)にも
 もっとお義父さんやお義母さんの介護に協力をしてもらえないかしら?
 私ももう限界なのよ・・・

そんな長男である夫にS・O・Sを出しても
うんっ?ああっ、まあそのうちにな・・・・
とまるで他人事のような暖簾に腕押しの状態
やはり長男である夫には親の介護の責任を感じる意識もまだまだ根強く残っていますから、なかなか自分の弟や妹には泣き言も言い難いものです。
同じ屋根の下で暮らしていても、なかなか自分の嫁がどれだけ義両親の介護で苦労しているか?もわかりにくいものですから、それも他の兄弟姉妹には言い難い原因かもしれません。ひょっとしたらあえて見て見ぬふりをしているかもしれませんが・・・(汗)

テレビの再現ドラマに相続トラブルが流れても長男である夫は
うちは相続ではもめなることなんてないから
とタカをくくっています。
でも、現実は家庭裁判所にまで持ち込まれる遺産相続トラブルの10人に7人が5000万円以下の遺産で争っています。
5000万円なんてちょっとした実家などの不動産と少しの現預金ですぐに達する金額です。

まずは、長男の夫の「自分の親の介護」と近い将来の「遺産相続」についてのもっと真剣に関心をもってもらわないといけません。
なぜなら、いくら長男の嫁であっても「義両親の介護」と「義実家の相続」では表立って口出ししてはいけないのです。
そうあくまで長男の嫁が「法律的には部外者」なのですからね。

民法改正|義両親の介護をした長男の嫁も遺産相続できるようになった?

民法改正
今回の民法改正の目玉とされているのが
被相続人に貢献した親族に金銭的請求権が認められる
という内容です。
これまでは、「特別寄与分」というものがありましたがこれは「法定相続人に限る」とされてきました。
ですからいくら「長男の嫁」であっても法定相続人ではありませんでしたので特別寄与分が認められてきませんでした。

今回、相続人への金銭請求権が認められる相続人以外の親族とは次の範囲の親族となります。
被相続人の6親等以内の血族
被相続人の3親等以内の血族の配偶者など
ですからもちろん義両親の介護に貢献した長男の嫁もこれに該当してきます。

しかし「特別寄与分」自体がなかなか認められにくい現実をご存知ですか?

笑顔の江本

僕は「テレビや週刊誌などの特集記事を鵜呑みにしないでください!」といつもお願いしているのですがどうも自分に都合の良いことはすっとい頭に入ってきます。
これがかなり歪められてかなり現実をかけ離れた形で・・・

未だこの「被相続人に貢献した親族に金銭請求権」の事例はキャッチできていないのですがおそらく今までの「特別寄与分」の考えと同様だと思われます。
すると、かなり期待外れと考えておくべきでしょうね。

特別寄与分の現実

特別寄与分は相続人全員で話し合って決められることであり、
誰かひとりが勝手に決められるものではありません。
※人は「自分のしたことは過大評価し、他人のしたことは過小評価する」ものですから話し合いで特別寄与分が認められにくいのはわかると思います。
それに納得出来ない場合は家庭裁判所の調停で決めてもらうのですが
特別寄与分が認められるのは全体の10%程度(10件に1件)
遺産の半分以上の特別寄与分が認められるのは1年間で10件程度
というデータもあります。
また、介護の貢献度の特別寄与分の算定には
介護の特別寄与分の証明には客観的な証拠資料が必須
介護の特別寄与分として認められたのがわずか1日当たり数千円程度という事例もある
ことから大きな期待はできません。
参考:特別寄与分の判例!いくら介護に尽くしても相続で認められにくい

義両親・義兄弟が100%満足する介護なんて長男の嫁どころか誰にもできない

長男の嫁がいくら義両親の介護に貢献しても、相続でそれが報われるのは他の義兄弟姉妹がどれだけ認めてくれるかです。
しかし、それもあまり大きな期待はできません。
なぜなら舅・姑は【悲劇のヒロイン】を演じがちだからです。
自分がどれだけ虐げられて小さくなって暮らしているか!を他の子供に訴えていることも少なくありません。
長男の嫁には
いつもすまないねぇ、ありがとう
と感謝の言葉を口にしていても他の子供たちには
ちょっと聞いておくれよ!
と長男の嫁の悪口・愚痴を涙ながらに他の子供たちに訴えるものです。
それは次男や嫁いだ娘に「もっと私(親)のことを気にかけておくれ!」という気持ちの裏返しなのですが得てしてそれは他の義兄弟姉妹は真に受けるものなのです。
高齢の親が「かまってちゃん」になってしまって、あることないことを他の義兄弟姉妹に言うことはよくあることです。
それは義両親の介護をしている長男の嫁のあなたならよくわかっていることと思いますが・・・。

週刊文春の取材でもこのことをお話ししたら記事にもなっちゃいました。(汗)

でも、義兄弟姉妹たちは決してそれを表立って口には出しません。
なぜなら、変な口出しをして親の介護を押し付けられたら困るのは義弟や義妹たちもわかっているからです。
いざ、遺産相続の話になった時にはじめてそのことを言い出すものです。

お義姉さんは義両親の介護で苦労してきたって言うけれど
 父さん母さんたちはいつも涙ながらにお義姉さんの愚痴を言っていたわ!
」(義妹)
結局 最後は老人ホームに放り込んだじゃないか!」(義弟)
だから
この遺産相続のこととお義姉さんのした介護のことは絡めないで欲しい!
と他の義兄弟姉妹から言われてしまいます。

遺産相続で長男の嫁が【知っておくこと】と【とるべき行動】


遺産相続で「長男の嫁」は予め知っておくべきことと覚悟しておくことがあります。
ひょっとしたら長男の嫁のあなただけでなく長男である夫も少し勘違いしているかもしれません。
いかに長男が親の介護を長男として全て負担してきたという自負があったとしても「俺が長男だからすべて俺が遺産は全部相続するからな」は法律的には間違っていると言わざるおえません。悲しいかなそれが法律なのです。
もし、そんな時代錯誤の勘違いをしているともめた時に弁護士からこんな風にたしなめられてしまいます。

また、親の財産は親が自由に使えますし、もちろんその遺産を子供の誰に相続させるかは親の自由です。
「こっちは長男なんだから!」という論理も通用しません。
親が「長男以外の子供の誰かに相続させたい」という遺志を遺言にまで書いて残しているのならば、それが尊重されるのです。
※もちろん遺留分減殺請求権は残りますが、親がそこまで遺志を残すにはそれなりの理由はあるものです。

どうかお金の魔力に惑わされることなく、冷静で客観的に今までの「長男の嫁としてしてきたこと」「長男の嫁としてこれからしなければいけないこと」を判断して自分自身で評価してみてくださいね。
相続トラブルは「どちらも被害者であり加害者である」という難しいものですが、そんなことでずっと兄弟姉妹たちが争うことは天国のお義父さんお義母さんが悲しむだけですからね。
意外と無茶な主張をしているのはあなた(長男の嫁)かもしれないことを肝に銘じてくださいね。

長男の嫁は義両親の介護・義実家の相続で口出しはできないけれど

失礼ながら私にご相談に来られる【長男の嫁】の方の中に少なからずこんな風に「長男の嫁」を勘違いしている!方も少なくありません。
また、あくまで長男の嫁は義実家の相続では法律的には部外者なのです。
ですから、あまり義実家の遺産相続に口出しをすると相続でもめることになるのです。

そうは言っても長男の嫁だけが泣き寝入りする必要はありません
きちんと対策だけは考えておかないといけないのです。
頼りない長男の夫に代わって裏方として「正しい相続の知識」と「正しい相続の知恵」は備えておく必要があります。
でないと、自分の親の介護もしなかった自分勝手な主張ばかりしてくる義兄弟姉妹には対応できないのです。
参考:「親の介護もしないのに偉そうに善人ぶるな!」と非難される兄弟

まず長男の嫁であるあなたがとるべき相続対策とは・・・・?

日頃から義両親の介護の状況をきちんと他の義兄弟姉妹には伝える努力をする

あまり義兄弟姉妹たちとの交流も少ない方が多いです。
これでは長男の嫁であるあなたが「どれだけ義両親の介護」に尽くしているか?は他の義兄弟姉妹にはわかりません。
介護はしている本人でないとその大変さはわからないもの?
だからこそ、少しでも理解してもらうためにまめに義兄弟姉妹に連絡(報告・連絡・相談)することに努めましょう。

意外とケアマネージャーを味方につけておくことも大事

親の介護の司令塔的役割であるケアマネージャー
そのケアマネージャーから介護の状況を義兄弟姉妹たちに伝えてもらう機会も大事ですよ、
介護家族にあまり立ち入ってはくれないサラリーマン的ケアマネージャーも多いですけどね・・・(汗)

まずは長男の嫁なら義実家の財産調査を日頃から心がけよう

長男の嫁としてまずはしっかりと行うことは義実家の財産調査です。
義両親の財産が『どこに?』『どんな?』『いくら?』を可能な限りで構わないので把握しなければなりません。
なぜなら、長男の嫁としてこれからの困難に立ち向かうためにはこれがわからないと大変なんです。

義両親の預貯金は?

足腰の弱ってきた義両親はそろそろ銀行に出向くのも大変になってきてはいませんか?
「お義母さん、年金が入ってきたか確認の通帳記帳してきましょうか?」
(通帳記帳だけなら任せてくれるかも?)
「お義父さん、実家の固定資産税の納付で銀行に代わりに行ってきてあげましょうか?」
なにかしら機会を見つけては義両親の通帳をのぞき見程度はできる機会を持っておくのもよいかもしれません。

義実家の実勢価格は?

義実家にはいくらの価値があるのか?いくらで売れるのか?
これ、結構重要なことです。

将来必ず起こる義両親の老後資金や介護費用の援助
これも長男に負担がどんとかかってくるケースも少なくありません。
曖昧にしていると遺産相続の時にそれがきちんと清算できないこともあります。

いざという時に「実家を売却して義両親の老人ホームや介護費用に充てる?」というのも義両親が認知症になってしまっていたら難しくなります。
たとえ長男といえど法律的に遺産相続では他の兄弟姉妹たちと同じ相続割合ですから、もし義両親の老後資金や介護費用の援助が必要になった時にどうするか?
これは実家の実勢価格を長男の嫁が把握しておくことは大事かもしれません。

もしかしたら相続の時にずっと続けてきた義両親たちへの経済的援助が清算されないとしたら?
自分たちの老後の計画にも大きな悪影響が出るかもしれませんから不安になります。
他の義兄弟姉妹たちから親の介護のための経済的援助を求められている夫から他の義兄弟姉妹たちに
父さんや母さんたちへの経済的援助は長男の俺がとりあえず毎月●●万円をするけと、もし父さんや母さんたちが亡くなった時にはこの実家を売却してその費用は精算することも納得しておいてくれないか。その清算後に残った遺産については兄弟姉妹できちんと遺産分割するという形でどうかな?
お金の話はたとえ兄弟姉妹間であっても曖昧にしてはいけません。

長男の夫に義両親の老後の経済的援助を他の兄弟姉妹たちから求められた時に、将来それが『きちんと清算されるかどうか?』がわからないと長男の嫁として不安や心配があって当然です。
しかし、
「実家を売却すればこれくらいは回収できる」
という目途が立っていれば長男の夫が義両親へ経済的援助をしても安心して賛成もできます。
ただしこれもあくまで兄弟姉妹間の信頼関係で成り立っていることにも知っておいてください。
法律的に必ず回収精算できるというものではありませんけどね・・・。

笑顔の江本

介護の世界も結局はお金の問題が大きいものです。
お金があればこそ「長男の嫁が義両親の介護で楽ができる」こともたくさんあります。
しかし、「家はあるがお金は無い?」という義両親がほとんどです。
その時のためにきちんと実家の実勢価格くらい知っておいてくださいね。

長男の嫁として義兄弟姉妹には既に不信感がある

多く長男の嫁はすでに
他の義兄弟姉妹には不信感がある
という状況ではないでしょうか?
正直 私もそんな状況の方からの相談もたくさん受けてきましたからお気持ちはすごく理解できます。
日頃からの義兄弟姉妹の態度からそれをウスウス感じているかもしれません。
確かに「お人好しで正直者がバカを見るのが遺産相続」という側面も否定できませんから・・・・

きっと恩知らずで無茶なことを主張してくるであろう義兄弟姉妹への対抗策

まず第一にいくら長男の嫁であっても「義両親の財産」について勝手にできる筋合いのものではありません。
ですから、義両親の考えを最優先にしなければいけません。
そのためには義両親の考えを他の義兄弟姉妹たちにきちんと伝わるようにする努力をしなければいけません。
※かなり難しいことは私もよ~く理解していますけどね。
最悪の場合はこんな決断も必要かもしれません。

できれば遺言書を書いてもらうことも考えるべきかもしれません。

なにも長男の嫁に遺産がいくような遺言書でなくてもかまわないのです。
長男である夫が他の兄弟たちとの遺産相続に少しでも差をつけるような内容の遺言書なら、きっと長男お嫁であるあなたの留飲も下がるのではないですか?

相続・遺産問題・遺言書でわからないことは弁護士に相談が早道!

■いくらネットで検索しても無駄です
相続のもめごとは百人いれば百通りで同じケースはありません。
だからネットでいくら解決策を探していてもあまり意味はないのです。
遺産分割で納得できないが自分の主張が正しいのか?間違っているのか?
そんなモヤモヤを抱えたままずっと悩んでいるよりも弁護士に相談するのが解決の早道です。
「相続弁護士ナビ」では、全国の相続に強い弁護士の情報をご提供するサイトです。

義両親がそのことに協力してくれないのであれば・・・?
義両親たちが相続のことで協力してくれるのは難しいのも現実です。
あまり直接的なアドバイスはこの場では控えさせていただきますが、こちらのヒントをお聴き下さい。
たとえば別居していた他の義兄弟姉妹たちからすれば「親の遺産がどれだけあるか?」を調べることはなかなか難しいということだけお伝えしておきますね。

逆もまた真なりでこちらもご参考に
参考:親の財産管理(お金・通帳)を子供の誰かがしていると相続でトラブルになる
もちろん義兄弟姉妹たちの縁を切るくらいの覚悟も必要ですけどね。(汗)
無茶苦茶な義兄弟姉妹たちの主張を跳ね返すにはそれくらいの覚悟も必要なんです。

笑顔の江本

これらのことを踏まえて私の相続対策・介護対策をよかったら目を通していただければと思いますし、気軽のご相談いただければまた違うアドバイスもできるかもしれません。