相続財産調査
誠に辛いことを言わなければいけませんが親が亡くなっても悲しむ暇はあまりありません。
なぜなら親がどんな財産を持っていたのか?
相続財産の調査を今すぐにでも始めなければいけないのです。
相続税の申告期限はわずか10ヵ月
相続放棄する期限ならわずか3か月以内
あるいは
遺産隠しを防ぐために早めに調べておく必要がある(※すでに使われた後なら取り返すのは至難の業)
だからです。
今すぐに相続財産の調査は始めなければいけません。
しかし、これがまた本当に大変なんです。
面倒くさがり屋のあなたはひょっとして「誰かに頼めないかなぁ?」なんて考えているかもしれません。

結論から言うと
「あなた自身が中心となって相続財産調査は行わなければいけません」
あくまで相続調査で専門家(司法書士・弁護士・行政書士)に依頼しても補助的業務でしかないのです。
調査金融機関の限定、不動産の調査など事務的手続きは代行できても、ある程度の調査対象はあなた自身で把握しなければなりません。
私もよく相続財産調査の相談を受けますが、まるで雲をつかむような相談ばかりです。
ですから、まずあなた自身が相続調査の方法を知っておいてください。
ただそれが簡単ではないこともあわせて理解しておいてくださいね。
その上で専門家(弁護士・司法書士・行政書士など)の力を借りてみることもいいでしょう。
ただ安易に専門家の力を借りると費用対効果(コストパフォーマンス)が悪いこともあります。
わずかの遺産のために多額の調査費用では割りにあいません。

親が亡くなっていまもバタバタしているかと思います。
まだまだその悲しみも癒えていなくて行動を起こす気力もないかもしれません。
とりあえず私のYouTubeチャンネルの動画で簡単に説明しますね。

いかがですか?
ちょっと相続財産の調査の大変さに気が重くなってしまったかもしれませんね。

相続財産調査を期間内(3か月以内)に終わらせなければいけない理由


相続財産調査は相続開始から3か月内に終わらせておかなければいけません。
それは
相続放棄の申述ができる期間が相続開始後※から3か月以内だからです。
※正確には相続人(子供)が被相続人(亡くなった親)の死亡を知ってから3か月だが・・・
もちろん諸事情により家庭裁判所に期限の延長を申し立てることもできますが、それも期限内に家庭裁判所に申し立てなければいけません。
それでもさらに3か月程度しか延長されません。
さらに相続税の申告期限も相続開始後10か月以内だからです。
相続税は遺産の分け方によっても大きく変わってきます。
・配偶者特別控除(法定相続割合or1億6千万円まで無税)
・小規模宅地の特例(自宅を同居人が相続する場合は8割評価減)など
しかし、相続財産調査が終わっていないと遺産分割の話し合いもできません。
「誰が?どの遺産を?相続するか?」
その前に相続財産調査は急を要するのです。

まずは自分で相続財産の調査の方法を知っておこう

自分で行う相続財産調査
ですから基本的にはまず自分で調べられる範囲で相続財産を調査すべきでしょう。
その上でどうしても分からない部分を専門家の力を借りるのが定石です。

相続財産の調査|実家の土地建物など不動産編

まずは「実家の土地たものなどの不動産」についてです。
実際に実家のことはあまり詳しく知っていなかったのではありませんか?
ひょっとしたら実家の住所程度しか把握していなかったのでは?
相続財産の調査では
・地番
・地積
・抵当権の有無
などが重要になります。

まずは実家の権利証(登記識別情報)を探す

まずは実家の権利証(登記識別情報)を探さなければいけません。
意外と権利証を見つけ出すのに苦労する子供たちも多いです。
重要な書類のため亡くなった親が盗までないようにわかりにくい場所に隠してあることもあります。
お仏壇の奥の奥の引き出しにあった?というケースもありました。

万一、どうしても見つからない場合は再発行の手段もあるのでご安心ください。

法務局で登記簿をあげてみる

「権利証」=「土地の所有権」と勘違いされている方も少なくないのですがそうではありません。
あくまで権利証とは登記手続きの必要書類の一部でしかありません。
なぜなら、登記簿を調べたら「何十年も前に亡くなった祖父名義のまま」ということもよくあることなのです。
そんな場合はまず「祖父の相続登記」から始めなければいけません。
祖父の相続人(叔父・叔母や従兄弟)全員に署名捺印をもらわなければいけません。
その時に相続トラブルになってしまうこともあります。
ですから現時点での登記簿情報を調べることは必須です。
余談ながら過去の共同担保目録付きで取得してくださいね。
共同担保とはなにか借金があった場合に複数の不動産で担保物件に供した場合に記載される他の不動産です。
これで思わぬ相続財産が見つかることもあります。

今はインターネットでも登記簿情報は調べられますが、一度管轄法務局まで出向いて閉鎖登記簿も調べてみることもお勧めです。
閉鎖登記簿とはデジタル化する前に使用されていた登記簿です。
そこには大昔からのその不動産の歴史が記載されています。
思わぬ情報が記載されていることもあります。

登記簿の調べ方はこちらをご参考にしてください。

市区町村役場で固定資産台帳閲覧申請(名寄帳)

同じ市区町村内の不動産であれば、名寄帳といって所有者別に市区町村役場が一覧表を備えています。
なぜなら固定資産税・都市計画税などを徴収するためです。

相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)が必要になりますが、市役所で固定資産課税台帳(名寄帳)も閲覧できます。

さらに重要なのはその不動産がいくらの価値があるものなのか?を調べること

相続税法上の評価は「土地は路線価」「建物は固定資産評価額」なのでまだわかりやすいのですが、これがいったい現実にはいくらの価値があるのか?
つまりいくらで売れるのか?
これが遺産分割の時に重要になってくることも知っておいてくださいね。

相続財産調査|預貯金などの銀行編

相続財産調査(銀行編)

相続財産調査で大変なのが「預貯金など銀行」です。
これが大変です。
もちろん預金通帳やキャッシュカードなどがあれば各金融機関に出向いて調査依頼をできます。
※もちろん相続人であることを証明する書類や費用もかかります。

しかし、それがわからないと大変です。
「どの銀行の?」
「どこの支店?」
までわからないといけないからです。
最悪、目星をつけた金融機関威片っ端からあたりまくる?ということもあります。

銀行
まず、銀行・信用金庫・信用組合・郵便局
どの金融機関のどの支店を利用していたのか?
それがわかればよいのですが、わからない場合は
ある程度、推測でその金融機関の支店へ出向かなくてはいけません。

ここで、予めどの銀行?どの支店?
がわかっていれば助かります。
相続人から調査を依頼すれば、亡くなった親が取引をしていたかどうか?教えてもらうことが可能です。

相続手続きにも必要な残高証明書

親が亡くなった時点での銀行預金の預金残高の証明書は相続手続きにおいても必要な書類です。
ですから、相続人が申し出れば残高証明書は比較的簡単に発行していただけます。
が、しかし・・・・

亡くなる直前に親の預金が引き出されていることも考えられます。

預金口座本人が亡くなれば、その銀行口座は凍結されて預け入れも引き出しもできなくなることがご存知ですよね?
ですから、亡くなる直前に銀行預金を引き出しておく方もいらっしゃいます。
ところが、残高証明ではその辺がわからないのです。
では、それはどうすればいいんでしょうか・・・・?

取引履歴は過去数年間にわたっての取引が記載してあります。
これを見れば、
何月何日 いくら引き出された?
とお金の流れが一目瞭然です。

もし、親が亡くなる直前に大きなお金が引き出されたのなら
その使い道が気になりますよね?

お葬式の費用にしては大きすぎる金額が引き出されていれば
そのお金がどこにいってしまったのか?

親の全財産を管理していた相続人の方に質問することもできるのです。

ただ、この取引履歴の開示は金融機関が拒否をすることも多いのです。

相続人全員の申請がないと取引履歴は開示しない
そんな金融機関が多いのです。

相続人全員・・・・?
もし、それを見られては困る相続人がいれば、
協力などしてくれませんよね。

このように相続人の誰かひとりだけが、親の遺産の内容に不信感を持ってもなかなか銀行預金は調べることができなかったのが現実です。

しかし、最高裁で相続人ひとりからでも可能という判例がでました。
平成21年の1月に最高裁の判決で
複数いる相続人の1人から、遺産の預金先の口座記録を開示するよう求められた場合、金融機関に開示義務があるかどうかが争われた訴訟で、最高裁は、「相続人は単独で開示を求められる」と判断。妥当である。
と判断されたのです。

これにより、最近では金融機関もその取り扱いに変化が見られたと聞いていますが、
まだまだその対応は金融機関によってまちまちです。
もし、相続人のひとりからだけの取引履歴の開示請求を拒む銀行などがあれば、
この最高裁判例を引き出して交渉してみるとよいと思います。

手続きに必要なもの

こういった手続きは、簡単にはできません。
フラッと銀行の窓口に手ぶらで訪問してもできません。
きちんと故人との関係性を証明しなければいけません。

ですから、
親との相続関係を示す書類として戸籍謄本
請求する人の実印と印鑑証明書

などが必要です。
※各金融機関で必要書類は異なりますので事前に確認しておきましょう。
また、手続きには日数がかかることも多いです。
数日から数週間もかかる場合もあると聞いています。
また、その手数料も一口座あたり数万円もかかります。

念のため、口座の凍結の影響も考えておきましょう。

口座名義人が亡くなれば、原則口座が凍結されます。
今まで口座名義人の死亡を知らなかった銀行も、
そこで死亡がわかるものですから
口座が凍結されてしまいます。
そうなれば、銀行の自動引き落とし(電気・ガスなど)も全てストップされてしまいますのでご注意くださいね。
意外と金融機関の口座凍結解除の手続きは、結構 煩雑なことも知っておいて下さいね。

残高証明書・取引履歴の発行依頼

相続税の申告では亡くなった時点での「残高証明書」も必要になります。
また、遺産分割協議で疑念がある場合には過去の「取引履歴」も調べることができます。
その中で不審な大きなお金の流れがあれば?

相続財産調査|「株式、公社債、投資信託などの金融商品」編

相続財産調査(株式)
親が投資をしていたのなら「株式、公社債、投資信託などの金融商品も相続財産調査の対象ですよね。

取引口座開設などの書類・証券・残高通知・取引案内を探す

親が使っていた証券会社を調べないといけません。
このあたりが銀行の調査と同じ感じです。
株式もあれば投資信託もあります。
ですから調べるのは
・証券会社
・信託銀行
などがあるでしょう。
しかも複数の取引口座を持つ方も少なくありませんから大変です。

証券会社・信託銀行に確認する

銀行と同じく各証券会社や信託銀行に相続人であることの証明(戸籍謄本など)して相続財産の調査をしなければいけません。

証券会社・信託銀行に取引残高報告書を発行依頼

・取引残高証明書
・取引報告書
・運用報告書
などの発行を依頼して相続財産の調査を行いましょう。

相続財産調査|親の借金を調べる


今までは面倒でもうれしい相続財産調査でした。
しかし、これだけでは不十分です。
それは「負の相続財産」つまり借金も調べなければいけない」こともあります。

これは各信用調査機関に依頼して調べます。
いわゆる個人信用調査会社です。
代表的なところを紹介しておきますね。
全国銀行協会(銀行などの借金)
CIC (消費者金融・クレジットカードなどの借金)
JICC(上記と同じ)
これらの機関に紹介をかけなければいけません。

ただ、連帯保証人の場合の連帯債務までは把握できません。

詳しくはこちらをご参考にしてみてください
参考:親の借金を調べる方法|親の借金がわからないと相続放棄もできない

一番簡単な相続財産調査は「生前に親に聞いておく」ことです

いかがですか?
どれだけ相続財産の調査が面倒で大変なのか?が若手いただけましたでしょうか。

一番簡単で楽な相続財産調査の方法は
生きている間に親に聞いておくこと
であることは容易にご理解いただけたと思います。

確かに生きている間に親の財産を聞くことは気が引けることです。
まるで自分が親の遺産をアテにしているようで・・・
と感じるかもしれません。
また、兄弟の誰かが出し抜いて親の財産の内容を聞くことは後々相続トラブルのボタンの掛け違いの原因になるかもしれません。

ですから生前に相続財産調査を行いたいなら
相続財産の調査の目的と大変さを他の兄弟に説明して一緒に行う。
金額がいくら?はわからなくてもかまわない。なにが?どこに?だけでも聞いておく
ことが大事です。

司法書士・行政書士・弁護士に相続財産調査を依頼できるか?

相続財産調査を司法書士に頼む

親の相続財産を調べたい理由として
遺産分割の話をするために親からの相続財産を調べたい
というのもあればあるいは
ひょっとして親と同居していた兄弟が遺産隠しをしているんじゃないか?
という疑念があるからかもしれません。
あるいは
相続財産調査に他の兄弟たちが協力してくれない
という場合もあるでしょう。

「だったら司法書士・行政書士・弁護士など法律の専門家に頼めないの?」

「忙しい?」
「面倒くさい?」
「調べ方がわからない?」
だから法律の専門家の「弁護士」「司法書士」「行政書士」に頼んで調べてもらうことはできないのか?
そんな風に考えるかもしれません。

結論から申し上げるとかなりコスパが悪いです。
費用的には「司法書士」「行政書士」あたりが安いのですが、あくまで被相続人から提供された情報をもとに相続財産調査を行うしかないからです。
「相続財産調査の手続きのわずらわしさを代行して欲しい」という場合は有効ですし、むこうも関連業務(相続登記・預金解約手続き代行など)が次の仕事につながりますから費用もそれほど高くはないでしょう。

かなりのお金持ちの相続であれば弁護士に職権で各金融機関に対して照会をかけてもらうことも可能と聞きます。
ただ弁護士に依頼する場合には相当の費用は覚悟すべきでしょうね。
私も少し相続財産調査の費用について弁護士に質問してみたのですがどの弁護士も
「ムニャムニャムニャ」
「ケースバイケース」
と明確な費用の目安は教えてはくれませんでした。
やはり、調停や裁判などに関連した補助的業務の延長なのかもしれません。
ですから普通の相続の場合は単独で相続財産調査だけを相談するのはちょっと難しいかもしれませんね。

弁護士・司法書士・行政書士の相続財産調査の費用の目安

もちろん相続財産に関する提供資料の度合いによっても変動しますがあくまで一つの目安として経験上私の目安はこれくらいではないか?と考えています。

弁護士・・・・・・・・・30万年~40万円
行政書士、司法書士・・・20万円~30万円

何度も言いますがまるですべて職権でなんでも簡単に相続財産がパパッと調べられるものではありませんのそのあたりはしっかり理解しておいてくださいね。
なにも資料の無いまま「相続財産を調査して!」と依頼してもそれは難しい相談です。

相続・遺産問題・遺言書でわからないことは弁護士に相談が早道!

■いくらネットで検索しても無駄です
相続のもめごとは百人いれば百通りで同じケースはありません。
だからネットでいくら解決策を探していてもあまり意味はないのです。
遺産分割で納得できないが自分の主張が正しいのか?間違っているのか?
そんなモヤモヤを抱えたままずっと悩んでいるよりも弁護士に相談するのが解決の早道です。
「相続弁護士ナビ」では、全国の相続に強い弁護士の情報をご提供するサイトです。

相続財産調査が終わったら

相続財産調査が終わったらいよいよ最も大変で憂鬱なことが残っています。
それは
遺産を相続人間でどう分けるか?
という問題です。

このあたりの問題は非常にデリケートですし今までの経緯・事情も関係してきます。
そんな中で私たち実家相続介護問題研究所が何かお手伝いできることがあれば幸いです。