ある高齢のお母さんが子供のひとり(長女)から勝手に成年後見人をつけられてしまいました。
成年後見人が家庭裁判所から認められてしまうと高齢のお母さんは被後見人となり勝手に財産を処分や使うこともできなくなります。(これを財産権の剥奪ともいいます。)
そして、ある日 突然 後見人(弁護士)はお母さんを老人ホームへ連れ去ってしまいました。
母に成年後見人を立てることを反対していた三女にその老人ホームは教えてもらえず母の行方はわかりません。

というニュースが今 話題になっています。

老人ホームに連れ去られる前のお母さんと三女との会話がYouTubeにまでアップされています。


確かに話し方はしっかりされていますから、まだ成年後見人を立てるほどには思えないようにも感じます。

86歳女性に勝手に後見人をつけて連れ去った冷酷な裁判所
本人の意思を訊ねもしなかった裁判所
事件のあらましはこうだ。母・晶子さんは軽度の認知症を抱えてはいたが、三女の光代さん(50歳・仮名)の介護を受けながら、東京・目黒区の自宅で、自身にとっては満足な生活を送っていた。

しかし、結婚して別世帯で暮らす長女と次女は、以前から施設に入った方が晶子さんにとって幸せだ、と主張していた。すれ違いが重なったためだろうか、姉二人は三女の光代さんが、母・晶子さんを虐待していると言うようにさえなった。

だが、ここまでは、不幸な家族内での意見の対立だ。

事態が一気に複雑化したのは、長女が家裁に対して、母・晶子さんに成年後見人をつけるべく申し立てをしたところからだ。

長女は、母・晶子さんにも、在宅介護をしてきた妹の三女・光代さんに何の相談もなく申し立てをした。そして驚くべきことに、裁判所もまた、後見をつけられる当人である晶子さん本人の調査を一切、行うことなく、2017年3月9日に後見人をつける決定をしてしまったのだ。

後見人がつけられると、被後見人(後見を受ける人)は財産権を制約され、後見人の許可なしには、自分の資産を動かしたり、契約をしたりすることができない。事実上の無能力者として扱われ、自由に社会生活を営めない状態に追い込まれる。

だが、母・晶子さんは認知症とはいえ、医師の診断でも後見人をつける必要のない「軽症」とされていた。そして、本人も、同居する三女・光代さんも、成年後見制度を利用する気持ちはさらさらなかった。

そのため、自分に後見人がついたことをあとから知った母・晶子さんは衝撃を受け、切々と涙を流しながら、冒頭のように気持ちを吐露したのである。

そして、さらに驚くべきことに、後見人がついたあと、自宅で三女・光代さんと暮らすことを望んでいた母・晶子さんは、訪問先のデイサービスから姿を消した。どこかの施設に連れ去られてしまったのだ。

連れ去ったのは、意見が対立していた長女と次女だというが、現場には2人の後見人弁護士もいたという。家族間の対立の一方に後見人が肩入れするだけでなく、本人の意向を無視して、身柄を移す手助けまでしていたのである。

事実、後見人となった弁護士は、三女・光代さんに、こう話していたという。

「申立人(長女)は(母・晶子さんが)施設に入られた方が安心だと思っている」「裁判所では、親族の間で意見の違う場合は、弁護士に(後見人につくよう依頼が)来るんですよ」

それ以来、三女・光代さんは、母親の入所する施設の名前さえ教えてもらえず、母の行方を探し続ける毎日を送っている。

深刻な司法の「手続き飛ばし」

本人の意思を無視しきった今回のケースは、成年後見制度の本来の趣旨に反するだけでなく、司法が抱える極めて重大な問題を露呈させるものだ。

成年後見制度の根本理念は「本人の意思を尊重」することとされている(民法第858条、身上配慮義務規定)。制度の本来あるべき姿を言い表していると言えるだろう。

では、今回のケースでのもっとも大きな問題は、どこにあったか。

家族内で意見の収拾がつかなかったのは不幸なことだが、長女が勝手に申し立てを行ったこと自体は、実は制度上は問題にならない(重ねて言うが、一般的に見て、不幸な経緯ではある)。

成年後見制度を利用するための申し立ては、本人のほか、四親等内の親族などが行うことができ、それに基づいて長女は家裁に後見開始の審判を申し立てたからだ。

しかし、問題はそのあとだ。後見人をつけられた母・晶子さん本人は、裁判所の審判の過程で一切、調査を受けることがなかった。意見を述べる機会がなかったどころか、そのような審判が行われていることさえ、知らなかったのである。

実は、これは法的にも義務付けられている手続きを、いくつも裁判所がスキップした「手続き飛ばし」であった可能性が高いのである。

引用元:週刊現代


姉が「成年後見人制度を悪用している!」という妹だが

家庭裁判所

確かにこの記事やYouTubeでの母娘の会話を聞いていると
「ちょっと成年後見人制度って悪用しているのではないか?」
なんて印象を持ってしまうかもしれません。

でも、今までたくさんの遺産相続トラブルや介護トラブルに遭遇してきた私には簡単にこの記事を鵜呑みにはできないのです。

成年後見人を申し立てる手続きってかなり煩わしいものです

成年後見人を立てるってす簡単な手続きではないのです。
まあ、このあたりも成年後見人制度がイマイチ普及しない原因でもあるのですが・・・

  1. 家庭裁判所へ成年後見人の申し立て

    家庭裁判所に成年後見人の申立てをするにはたくさんの書類を準備しなければいけません。
    □申立書(定型の書式が家庭裁判所に行けば無料でもらえます)
    □申立人の戸籍謄本1通(本人以外が申し立てるとき)
    □本人の戸籍謄本、戸籍の附票、登記事項証明書、診断書各1通
    □成年後見人候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書、登記事項証明書各1通
    □申立書付票
    □本人に関する報告書が必要な場合もあります。
    ※登記事項証明書は、東京法務局が発行する後見開始の審判等を受けていないか、あるいは既に受けているかについての証明書のことです
    ※身分証明書は、本籍地の役所が発行する破産宣告を受けていない旨の証明書のことですには流れに関する詳細文章が入ります。

  2. 成年後見人申立ての費用

    もちろん成年後見人の申立てだけの費用です。
    成年後見人が認められれば毎月別途の成年後見人への報酬が発生します。
    成年後見人の費用自体は「後見開始の申し立て800円」「通信用切手代3千円程度」「後見を登記する費用2600円」とそれほど大きな金額ではありません。
    正直 必要書類を集める苦労に比べたら申し立て費用は微々たるものです。

  3. 後見開始の申立てはどこの家庭裁判所にするのか?

    本人の住所地の家庭裁判所に成年後見制度を利用するには申し立てをします。
    必要書類や諸費用はは事案により多少異なることも多いので各家庭裁判所にご相談するのがよいとおもいます。

  4. 後見開始の申し立てに基づき家庭裁判所の調査官が事実の調査が入ります

    関係者(申立人、本人、成年後見人候補者)が家庭裁判所に呼ばれて家庭裁判所の調査員に今の状況や事情を説明します。
    もちろん、成年後見人候補者には家族もなることが可能ですが一般的にその成年後見人候補者について関係者の意見が聴取されます。
    「妹の私は長男が成年後見人になることは反対です」なんて意見がでればその家族が成年後見人になることはありません。
    家庭裁判所が独自に事情や状況を勘案して成年後見人を選任します。
    最近では第三者である弁護士・司法書士などが成年後見人に選任されることが多いときいています。
    成年後見人による横領が後を絶たない(親族による着服が9割)

  5. 本人の認知症の程度を調べる為精神鑑定をする場合があります

    本人の精神鑑定結果が必要な場合もあり、その精神鑑定費用が5万〰10万円程度といわれています。
    ただ実際に精神鑑定が行われるのはせいぜい10件に1件程度と言われています。
    ひょっとしたら認知症とのボーダーラインの状態の方の後見開始の申し立てが少ないのかもしれませんね。

  6. 最終的に家庭裁判所が審判を下します

    様々な状況や事情を勘案して最終的に家庭裁判所が後見開始するか否かの審判を下します。
    成年後見人制度の利用が妥当と判断されれ成年後見人を認定します。
    申立書に記載した成年後見人候補者がそのまま選ばれることもありますし、意見書で他の家族が反対の意見があれば家庭裁判所独自の判断で第三者である弁護士や司法書士等が選任されることもあります。

  7. 審判の告知と通知があり後見法定後見の開始となります

笑顔の江本

いかがですか?
めちゃくちゃ大変な手続きだと思いませんか?
しかし、そこまでして成年後見人を立てることを決意した姉二人の理由はなんなんだろう?
と思いませんか?



ここまで煩わしい成年後見人制度を利用する目的はなんだろう?

わざわざこんなに煩わしい成年後見人制度を利用するための手続きをする目的ってずばり
遺産隠し・遺産の使い込みを防止するため
の方がほとんどではないでしょうか?
親への虐待を防止するためや親の介護のことを第一に考えているケースはあまりないように思います。

本来の成年後見人制度の目的である高齢の親が認知症になって悪徳商法や詐欺にひっかからないようにするために親の財産を守るという目的で成年後見人制度を利用する方がどれほどいるのか?
私にはわかりません。
成年後見人に関するほとんどのご相談が
兄弟姉妹の誰かの遺産隠し・親の財産の使い込みを防ぐために考えている方がほとんどです。


遺産相続トラブルや介護トラブルでは双方とも加害者であり被害者であるということ

成年後見人を立てるほどもめた姉妹
今回のニュースだと勝手に成年後見人を立てて母を連れ去った姉たちが悪者で、母の行方もわからない三女の妹がかわいそうだ?という風に簡単にとられてしまいがちです。
しかし、そこには同居の三女に対して姉たちの強い不信感があるにちがいありません。
ひょっとしたらお母さんが高齢で認知症であることをあることをいいことに三女の妹が親の財産を食いつぶしている気配があるのかもしれません。
えてして誤解のことも多いのですが現実にたくさんあるケースです。
高齢の両親の財産管理を誰かに任せている人、任されている人の相続は気をつけて

どちらが悪い?正しい?とは部外者では誰もわからないものです。
本当に遺産相続トラブル・介護トラブルでは
「双方が加害者であり被害者でもある」
というのが真実かもしれません。

同居の子供の介護の苦労
別居の子供の不信感(遺産隠し 使い込み)
これは当事者じゃないとわからないものです。

本当に多くの方が楽観的にお考えですが、ちょっとしたことで大きな誤解や疑念がうまれるのが介護トラブル・相続トラブルなのです。

また高齢者の多くは、しかも初期の認知症の方は特に
被害妄想が大きいのか?
悲劇のヒロインを演じて子供たちの関心を引きたいのか?

とかく子供の前では他の子供の悪口を言うものです。
しかも涙ながらに・・・
これを真に受けてしまった別居の子供たちが
親と同居している子供に対して「親への虐待」を疑ってしまうこともあるのです。


今回のニュースを読んで成年後見人制度の悪い所ばかり強調していますが成年後見人制度そもそもはきちんと理解すればとても良い制度です

きちんと理解すれば成年後見人制度は非常に良い制度だと思います。
ただ
ただ
その前にしっかりと「親子で」「兄弟姉妹みんなで」親の老後や介護や相続のことを一度でも本音で話し合っていればこんなことは起こらないような気がします。

だから私がこんな活動をしているのです。
あなたの自宅や実家で行う【親の老後・介護・相続を考える出張セミナー】
子供たちみんなで話し合う親の介護・相続ミーティング

相続・遺産問題・遺言書でわからないことは弁護士に相談が早道!

■いくらネットで検索しても無駄です
相続のもめごとは百人いれば百通りで同じケースはありません。
だからネットでいくら解決策を探していてもあまり意味はないのです。
遺産分割で納得できないが自分の主張が正しいのか?間違っているのか?
そんなモヤモヤを抱えたままずっと悩んでいるよりも弁護士に相談するのが解決の早道です。
「相続弁護士ナビ」では、全国の相続に強い弁護士の情報をご提供するサイトです。