正しい相続対策
今は我々不動産業界でも相続ビジネスが花盛りです。
あちらこちらで相続税対策セミナーが開催されています。
ちょっとした興味本位で参加すると・・・
相続税の基礎控除額が大幅減額されたんですよ!
相続税率があがったんですよ!
だから
あなたも相続税対策をしないと相続税がドカンとかかりますよ!
 賃貸アパートを建てて相続税評価を下げて節税しましょう!
 借金してでも不動産を購入して相続税対策をしましょう!

なんて銀行や税理士から脅されて不安になっているのではありませんか?

でも
相続税対策をしたばっかりに逆に大きな損をした?
相続税対策をしたばっかりに逆に相続でもめた!
そんな方が増えています。
巷では相続税対策をしたばっかりに相続倒産を招いてしまった?
という実例まであるくらいです。

笑顔の江本

私もたくさんの方から相続のご相談を受けてきましたが、
そもそも税理士が勧める相続税対策には
「?????」
と思うことも少なくありません。

確かに税法上の理論は間違ってはいないのですが、その前提条件に疑問が残るのです。
税法から考えたら正しいがそれが机上の空論である相続税対策の間違い
相続税の節税よりももっと大切なこと
円満な相続対策とお考えならこのあたりをしっかりと抑えてからにしてくださいね。

払える相続税なら相続税対策なんかせずさっさと現金で納税したほうがまし

相続税
とにかく
1円も相続税なんて払いたくはない!
相続税をゼロにする方法を教えろ!
そんなご相談がたくさんあります。

なにがなんでも無理やり相続税をゼロにする?
それがどれほど危険なことであるか?をみなさんあまり知りません。

笑顔の江本

私は数百万円~1千万円程度の相続税ならあれこれ策を弄して節税するよりもさっさと納税したほうがよほど安心できると考えています。

相続する遺産がひとり当たり5000万円以下なら相続税対策の節税は失敗する可能性が大きい

まず相続税には基礎控除額があります。
3000万円+(600万円×法定相続人数)
この範囲の相続財産ならば相続税は関係ありません。
相続財産からこの基礎控除額を差し引いた相続財産をもとに相続税の計算が始まります。
まず、相続税の計算では基礎控除額以上の相続財産に対して最初に法定相続割合で相続したと仮定して各相続人の課税価額を算出します。
その各相続人の課税価額ごとに該当する相続税を計算し、その合計額が相続税になります。
この相続税合計を相続する遺産の割合によって按分することが基本となります。

相続税の速算表

課税価額 相続税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

このように相続税率は累進課税です。
遺産が多ければ多くなるほど相続税率が高くなります。
ですから相続する遺産が最高税率55%にまで達するのであれば相続税対策は必須です。
しかし、それ以下の10%~20%程度であればあえて大きなリスクを抱えてまで相続税対策は考える必要がないかもしれません。
なぜなら相続税対策には大きな失敗のリスクも伴っているからです。
最高税率に近いのであれば相続税対策で多少の失敗しても
相続税節税額」(大) > 「相続税対策失敗による損失額」(小)
トータルでは得になります。
しかし相続税率が10%~20%程度のひとりあたりの相続財産が5000万円以下程度であれば
「相続税節税額」(小) < 「相続税対策失敗による損失額」(大)
となるケースも少なくないのです。

一人当たりの相続遺産が5000万円以下の相続税率は20%
もし、その相続税対策で相続税をゼロにしたとしても、そのことが原因で20%以上の損失が出たら結局その相続税節税対策は損になります。
20%がどれだけ悪いリスクリワード(損と利益の割合)であるかというと
1億円の賃貸アパート建設や不動産購入で売却で8000万円を切ったらどうなるか?ということなんです。
賃貸アパート建設や不動産購入には諸経費も大きくかかります。
不動産取得税
抵当権設定費用
仲介手数料
などなど優遇されているマイホームとは異なり相続税対策目的での賃貸アパート建設・不動産購入には軽減措置など無いのでかなり諸経費は高額になります。
相続税対策として不動産を購入する場合は
・購入時に20%程度
・売却時に5~10%程度
の諸経費がかかります。
おっとこれだけで20%を超えてしまいますね。

またその相続税対策がかえって「それが原因で相続トラブルにもなる」可能性も大きくのですからふんだりけったりですよね。
※賃貸アパート建設や相続税対策目的で購入した不動産は遺産分割の際の売却換金化が難しい遺産の代表格です

賃貸アパート建設・不動産購入などの相続税対策は大きなリスクを覚悟

相続税対策のリスク

親の土地の賃貸アパートを建てて相続税評価を下げる?
相続税対策目的で借金して不動産を購入する?
相続税対策だけの視点だけであればそれは大正解です。
賃貸不動産にすれば
土地は路線価×(1-借地権割合×借家権割合)
※通常 路線価は実勢価格よりも安いとされています。
建物は固定資産評価額(1-借家権割合)
大きな相続税節税効果が見込めます。

でも問題はその後なんです。
そんな相続税対策で相続が終わってからみんなどれだけ困っているか?
私のもとに寄せられる相談からも容易に推測できます。

不動産が相続税対策になる時代の終焉?

とにかく不動産は相続税対策になる!というのが今までの通説でした。
ぼくも十数年前まではそう考えていました。
しかし、今はそうとも断言できなくなってきているのです。
きちんと節税効果と相続後のリスクのバランスを考えないといけないのです。

相続税対策で建てた賃貸アパートに入居者が入らない?

未だに大家さんは
「悠々自適」
「アパート経営の家賃収入は不労所得、寝ていても家賃がチャリンチャリン!」
なんて幻想がはびこっています。

でもね、それって都心部の中だけなんです。
駅前の一等地ならともかくちょっと離れた所(駅から徒歩10分以上)なら満室になるのは新築の時だけ。
ものの数年でハウスメーカーの設定した家賃で入居者は見つからなくなります。

家賃保証制度があるから安心?とタカをくくっている親バカ地主さんがどれだけ多いことか・・・
一時注目されたレオ●レスのニュースをもうみんな忘れているんですね。
※親バカ地主・・・自分の所有している土地を客観的に見れず過大評価する地主

泣く江本

私もよくセカンドオピニオンとしてハウスメーカから提案された事業収支を拝見しますが、その想定設定家賃の高さには驚くことが少なくありません。
しかもその想定設定家賃でもキャッシュフローはカツカツ?手残り現金は勧めの涙?
大きな相続税節税効果でなんとかそれも肯定できますが、金利上昇・メンテナンス費用負担・入居率低下でもあればすぐに持ち出しが発生します。

今の日本は人口減少で少子化なんですけどね。
採算的にどの賃貸アパートもワンルームばかりですが、借りる若者層も少なくなってきていますし、今はずっと実家暮らしを続ける子供ばかりです。
親もそれほど子供に仕送りなど子供に投資できる余裕はありません。
弊社に大学入学でお部屋探しに来られる親御さんたちも最優先事項はまず「安い低家賃物件を紹介して!」です。
もし、あなたが大金持ちの資産家でもなければそんな状況も肌に染みて実感やご理解もできるはず。
でも、そんなことを「相続税対策になる」という甘い言葉にみんなコロッと洗脳されてしまいます。
「うちの商品はデザインなど独自性があって入居者にとても人気です!」
とどのハウスメーカーの営業マンの方はみんな言われますが数年経てば近所の競合する賃貸アパートとそんなに差はなくなります。
そんな甘い営業トークに惑わされずにいてください。
きっとその空室が多い近所の賃貸アパートも建築時にはそんな営業トークをされているものです。
所詮 ワンルームはワンルーム、2DKは2DK 結局数年も経てばどれも大差はなくなるものなのです。
建物のデザインや間取りで常に満室経営なんていう魔法なんか私は知りませんし、そんな魔法はすぐに模倣されてしまいすぐに当たり前になり次にまわりで建てられる新築賃貸アパートでは標準装備となります。

いまの賃貸アパート大家業は片手間にできるものではありません。
大家業はりっぱなサービス産業なんです。
どこの大家さんもとても涙ぐましい努力をしています。
いっときの時代錯誤的高飛車の勘違い大家さんの賃貸アパート物件なんかわれわれ不動産業者は見向きもしません。
だって他に紹介する物件がゴロゴロあるからです。
※「入居させてやる」という勘違い大家さんもかなり数は減りましたが未だに存在しますけど・・・

ですから相続税対策で賃貸アパートを建てる前に周辺の賃貸アパートの募集家賃や不動産会社に支払う手数料も調べていおいてくださいね。
新築時にはさっと満室なった賃貸アパートでも10年も経てばみんな
敷金礼金ゼロゼロ物件
不動産会社に支払う手数料や家賃の3か月分
シーズンオフのワンルームで入居者から迫られるフリーレント
入居者が入れ替わるたびにリフォーム(数十万円)
そんなまわりの賃貸アパート入居募集条件にあわさなければいけなくなります。
これで採算に合う物件はよほどの好立地でしか成立しません。

ものの10年程度で、一括借り上げ家賃保証金額の減額交渉がくることもよくある話です。
これからも継続的に賃貸アパート建設が見込める大地主様ならばそんな無茶な要求も一括借り上げ家賃保証しているハウスメーカーもしませんが、相続税対策で建てる賃貸アパートが1棟で完全終了?の極小地主ならばすぐに借り上げ家賃の減額交渉?承諾しなければ借り上げ契約終了?という悲惨なことになることもあります。
でも、これは正常なビジネス行為なのです。
なぜなら一括借り上げ家賃保証契約書には小さな小さな文字で「借り上げ家賃はその時の経済状況により変更できる」と書かれているからです。

土地値でしか売れない?相続税対策で建てた賃貸アパート

不動産は遺産分割しにくい遺産の代表です。
そして最終的には「相続発生後には売却換金化してお金で遺産分割する?」というケースも想定できます。
しかし、その売却で困ることもあるのです。
私たち不動産業者でも正直なところ、市場価格も売却してみないと分からないし、
結局円満な相続対策のゴールは結局は売却してお金で遺産分割しなければいけません。
でも、その売却価格が問題なのです。
「これくらいでは売れるだろう?」という査定価格はご提示できますが100%必ずすぐに売れます!という価格となると多少は低めの金額になってしまうのは仕方ありません。

相続税対策で建てる賃貸アパートの利回りは10%以下では?

賃貸アパートを建てる土地はすでにあるから土地取得費はゼロ?ということになります。
多くの地主さんはここでハウスメーカーの言いなりに贅を尽くしたゴージャスな賃貸アパートを建てます。
最新設備を備えた賃貸アパートでまして新築ですから普通ならあっという間に満室になるでしょう。
※必ずしもすぐ満室になるということもない地域も多いですけど・・・(汗)
でも、それでも土地代ゼロの建物建築費だけの利回りで10%もいっていないのではないですか?
実はいくら贅を尽くした賃貸アパートでも余分にかけた資金に対してそれだけの家賃はとれないものです。
その時は最新設備であってもものの数年で当たり前の陳腐化してしまうものですよ。

で、相続後に売却してお金で遺産分割しようとしてら・・・?
購入される方はあくまで不動産投資としての投資判断します。
まあ相続対策で中古賃貸アパートを購入する場合もありますが、それは圧倒的に超少数派です。
多くは購入資金のほとんどの借り入れるフルローンで借りて返済・諸経費を差し引いて手残り現金がいくらあるか?
キャッシュフローで不動産投資家は考えます。
新築でない中古ですから建物残存耐用年数も減っていますから35年ローンなんて組めません。
今の状況だとせいじえ20年が多いです。
そうするとどうしても表面利回り10%以上は欲しいところです。

土地第ゼロの建築費だけの利回りでせいぜい6%~7%程度
もちろん新築で35年ローンですからある程度のキャッシュフローは見込めるでしょう。
しかし、10年も経てばいろいろメンテナンス費用も掛かってきますし、なにより家賃の下落はあると思います。
そこで売却を考えて表面利回り10%以上を確保しようとするとほぼ土地値?ということにもなるのです。

2020年現在 ス●ガ銀行事件以降に銀行は不動産向け融資をグーンと引き締めています。
すると相続税対策で建てた賃貸アパートの売却はかなりシビアな状況であるといわざるおえません。
特に人気のエリアと不人気エリアでは価格(利回り)や需要に大きな偏りがあるのが現実です。

泣く江本

わたしも相続専門の不動産会社として
相続も終わって落ち着きましたからそろそろ売却してそのお金を分けることを考えるのはいかがですか?
 今の状況は明らかに異常なくらいですから売却にはよい時期ですよ!

とアドバイスさせていただきましたが聞く耳を持つ方残念ながら少なかったです・・・
 今は売却のご相談を受けていますがとてもご希望金額では売れません。

2020年現在 銀行は不動産向け融資をグーンと絞っています。
昨今の「か●ちゃの馬車」などス●ガ銀行問題が起こってからは不動産向け融資の風向きがコロッと変わりました。
不動産融資が出ないことには賃貸アパートの売却値段はドーンと下落してしまうのは仕方ありません。
そんなに相続税対策で賃貸アパートを購入しなければいけない方なんて少ないですし、多くは相続税に関係なく純粋な不動産投資として事業採算にあう物件しか不動産投資家は購入しませんからその目線(利回り)はとてもシビアです。

相続する土地が【路線価(安い)】<【実勢価格(高い)】とは限らない

そもそも不動産が相続税対策になるのは相続税評価上
土地は路線価評価
建物は固定資産税評価
という仕組みによるところが大きいからです。

それがどの税理士も当たり前の常識と考えています。
しかし、相続専門の不動産会社の私には「そうとも断言できないんだけどなぁ・・」といくケースも少なくないのです。
地価の二極分化は激しく
意外と【路線価】と【実勢価格】にそれほど差がない地域もたくさん増えてきています。
このあたりは実際にあなたが調べてみるべきかと思います。
参考:国税庁の路線価ホームページ

東京圏や大阪中心部でもなければ・・・
ちょっと駅から離れていたりしたら・・
とくに広い土地なら・・・
路線価と実勢価格にそれほど差がないことも今は珍しくはありません。

【重要】相続税対策で購入した不動産が買った価格では売れない

一時期流行った相続税対策として
都心のタワーマンション購入
がもてはやされました。
どの税理士も
タワーマンションは相続税節税効果も大きく資産価値も落ちません!
と言ってはいましたが・・・

時々相続税対策で購入されたタワーマンションの売却査定も受けるのですが
その売却査定価額をお伝えするろ驚かれます。
しかし、私の営業エリアの大阪圏では相場は明らかに下落トレンド
「東京オリンピックまでは値下がりしない?」
なんて誰が言っていたのでしょうかねぇ?
爆買いの中国人の方もなりをすっかりひそめてしまいましたし、そもそも資産価値の落ちない不動産なんてあるのでしょうか?
たとえ土地は値下がりしなくても、建物比率の著しく高いタワーマンション
(だからこそ相続税節税効果大なんですが・・・)
建物は時間の経過とともに古くなって価値は下がる?
というのは当たり前です。
ですから、建物の経年劣化の値下がり分以上に土地価格が上昇してもらわないと購入した値段で売却は難しくなります。

参考:不動産は土地で相続するより売却してお金のほうが相続税対策になる

相続税対策は税率が低い人ほど失敗のリスクもある

相続税対策にノーリスクなこのはありません。
しいていえば遺産の分け方や生命保険による相続税節税対策です。
しかし、これらは守りの相続税対策なので相続税をゼロにする劇的な相続税対策とは言えないかもしれません。
相続税をゼロにする攻めの相続税対策にはそれなりのリスクがあることは肝に銘じておいてくださいね。

一人当たりの相続税率が55%(ひとりあたり遺産額が6億円超)から30%(一人当たりの遺産が1億円)ならば少々相続税対策で失敗?となっても相続税節税効果を考えたらトータルでは得?という場合も多いでしょう。
しかし、それ以下の場合なら相続税対策の失敗が命取り?になるリスクもしっかりと認識しておいてください。
相続倒産』という言葉もあるくらいですからね・・・・

笑顔の江本

無理やり相続税ゼロにするハイリスクな相続税対策なんかするよりも
払える相続税ならスパッと払ってしまって
円満な相続を目指すことが賢明な場合も多いことも知っておいてくださいね。