田舎のアパート経営は厳しい
「どうかこれ以上借金を増やすことなどしたくありません!
 江本さん、親父にこれ以上賃貸マンション賃貸アパート
 建てないよう説得してもらえませんか?」

時々、そんな難題をお願いされて困る私です。



すでに田舎出のアパート経営は厳しいのにハウスメーカーの営業マンに言いなりでマインドコントロールに陥っている父親

ハウスメーカー営業マン
ハウスメーカーさんの営業マンはすごいです。

あのガードの固い地主さんを口説き落とすのですからね・・・。

とても私の真似のできる芸当ではありません。

農業

田植えの時期には背広姿で田植えを手伝うハウスメーカーの営業マン

これは有名な話です。

田植えの時期が来れば、
さりげなく(もちろん計算済み?)ターゲットを定めた地主の田んぼや畑に行き、
さも偶然を装い、農作業を手伝うのです。
しかも背広姿で行います。

そんなことが度重なると
「なんと親切で優しい営業マンだ!」
と株はうなぎのぼり!

そして満を持して賃貸マンションや賃貸アパートの建築計画のプレゼンです。

すでにそのハウスメーカーの営業マンとはしっかりと信頼関係が築かれています。

もちろん、
それほどの支障も無く賃貸アパート建築決定!
となります。




賃貸マンション

そんな営業手法で何棟もアパートや賃貸マンションを建築し続ける地主さん

『芸能人は歯が命、アパート経営は立地が命!』と言います。(笑)

畑や田んぼがたくさん残っている地域に賃貸アパートを建てるのですから、
必ずしも賃貸需要が旺盛な地域だとはいえません。
夏になれば、カエルの大合唱が聞こえるところです。

そんな場所にバンバンと賃貸マンションや賃貸アパートを建てても大丈夫なのでしょうか?

でも、決定権者の親は馬耳東風?

それを傍から見ている子供達はちょっと不安です。

ですから、
「うちの父にもうこれ以上賃貸マンションを建てないように説得してくれませんか?」
という子供達からのご相談もよくあります。





相続税対策としてアパートを建てる

確かに賃貸マンションや賃貸アパートを建てれば相続税対策になりますが問題は健全なアパート経営ができるか?です

貸家建て付け地となり相続税評価は下がります。
また、その建築資金も土地を担保に銀行はホイホイ貸してくれます。
借金はもちろん負の相続財産ですから、相続評価も下がります。

が、しかし?
そんなに甘い時代ではありません。
人口減少
少子高齢化
この不景気

なにをとっても賃貸マンション大家にとって有利になっていく要素はありません。

しかも、以前に建てた賃貸マンションもチラホラ空室が目立ちだしたり
一括借り上げの家賃保証の金額の減額交渉も来ています。
そんな状況になっても、なお賃貸マンションや賃貸アパートをさらに建てようと勧めてくるのがハウスメーカーの営業マンです。

しかも、それを父親は真剣に検討しています。
賃貸マンション建築を考える父親
将来の相続を考える子供達にとっては、
相続税のことも心配ですが
それ以上にその賃貸マンションが順調に運営できるか?
銀行から借りた借金は返済できるのか?
も心配なのです。

いったん賃貸マンションを建てれば、簡単には売れにくくなります。

更地であれば、色々な用途に転用もできるのですが、
賃貸マンションや賃貸アパートが建築されていれば不動産投資物件としての売出ししかできません。

もしそれを売却しようとすれば、あくまで投資物件としての利回りが判断基準となります。
まして都会のど真ん中ではなく、むしろ田舎?といっても良い地域であればなおさらです。

こんな所に不動産投資をしようとする投資家ならば、かなりの利回りを要求します。

そして、増えるのは建築資金の借金ばかり!
相続税を支払う納税資金の現金はあまりありません。

ハウスメーカー営業マンそのことをハウスメーカーの営業マンに相談すれば
「相続税が一度に払えないのなら延納すればいいですよ!
 そのお金を家賃収入でまかなえば大丈夫ですよ!」

と言うけれど不安になって私に相談していただいたようです。


そこで不動産投資コンサルタントとしての私の登場でした。

相続対策専門士江本圭伸そんなご相談を受けた息子さんと私はお父さんのところに出向きました。

ちょうど少し暑い梅雨の時期でした。
出してくれたアイスコーヒーはコップの周りにこげ茶色のツブツブがたくさんついています。
そうです、
ネ○カフェかなにかの粉のインスタントコーヒーを水で溶かしたものです。
何百坪も所有している地主さんでも、決して裕福とは限りません。
意外と多くの地主さんは本当に質素な暮らしをしているのが普通です。

そこで、
その計画の家賃設定が高すぎることを説明しました。
※おそらく数年後には一括借り上げの家賃保証の減額が来るのは必至です。
また、これから大家さんにとってアパート経営が厳しくなることも説明しました。

しかし、お父さんは私とは目もあわせていただけず無言です。
※「早く帰れ!」オーラ全開です。

そして、
「相続税の納税資金のためには、売却用に土地を残しておくこともお考えになってはいかがでしょうか?」
とアドバイスさせていただくと逆鱗に触れてしまいました。

葬式用の写真
























「売る?先祖代々の土地を売る?あんた なに言うてんねん」(怒)

お父様の頭の中には、先祖代々の土地を手放すことなど毛頭ないようです。
確かに先祖代々の土地を売ることには親戚の目もあることでしょう。

でも、現実を見てはいただけないのです。

相続税の納税資金はどこから捻出するのでしょうか?
相続税の延納には高い利息がつきます。
※ 不動産が半分以上の場合は年3.6%

これを下がり続けるかもしれない?家賃から建築資金のローン返済にプラスして支払わなければいけません。

しかも、将来相続する子供達にとっては、あまり先祖代々の土地などの不動産にはあまり執着はないのです。
また、日ごろからアパート経営の苦労も見てきている子供達です。
「できることなら、アパート経営なんてしたくない!」
というのが本音です。
都会と違って田舎ではアパート経営は決して楽ではないのです。


しかし、私には役不足でした。

何年もの間、農作業を手伝って築き上げたハウスメーカーの営業マンと
その日 初めてお会いする私との信頼関係では天と地の差があります。

私のアドバイスには耳も貸していただけませんでした。

後日、そのハウスメーカーの営業マンから連絡が

ハウスメーカー営業マン
「アパート建築の邪魔をしたから、クレームの電話かな?」
と思ったのですが、そうではありませんでした。

「きちんとキックバックしますんで息子さん 説得してくれませんか?」

どうも、息子さんの反対にお父さんも迷いだしたようです。

もちろん、その申し出はきっぱりお断りしましたけどね・・・・

しかし、心のガードが固い地主さんほど
いったん信用すれば、とことん信用してしまうのはなぜなんでしょうか?

結局、『裸の王様』みたいな地主さんて本当に多いんです。




その後の結末は?

「賃貸マンションを建築するのは、もう少し慎重に決断しよう!」
という結果になったようです。

相続税のシュミレーションや今後の動向を私ではなく息子さんの方からお父様にお話されたようです。

私がお話しても、頑なに拒むお父様でしたから仕方ありません。

そして、
息子さん自身の考えを息子さんの口から思い切ってお父さんにぶつけたようです。

やっぱり、相続に関しては家族全員が腹を割って真剣に話し合うきっかけが必要なんですね。



ただし、賃貸マンションや賃貸アパートを建設するのがダメということではありません。

賃貸マンションや賃貸アパートを建設することは相続税対策や妻や子供たちの安定的な生活を確保する上で有効な対策になることも多くあります。

ただ、大家は悠々自適?というのはとっくに終わりました。

ですから大家さんも必死のぱっちでアパート経営を行わないといけない時代なのです。

また、賃貸マンションや賃貸アパート建設においてはしっかりと立地や将来の予測を見極めなければいけないのです。

ですから、セカンドオピニオンというか客観的に相談できる人を確保しておくのも大事ですよ!

相続対策専門士江本圭伸人生において大事な4種類の友人とは
医者
弁護士
税理士

そして
不動産屋
ともいわれますからね?(笑)