もしかしたらあなたは
「私たちは長年 親と同居してきたんだからこの実家は私たちで相続できて当たり前!」
「私たちが親の世話をみてきたのだから多めに相続できて当たり前!」
とお考えでしょうか?
たぶんあなたの当たり前は「特別寄与分」のことをおっしゃられているかと思います。
でもこの特別寄与分という言葉をよ~くみてくださいね。
寄与分の前に「特別」という言葉がついているんです。
この特別という意味は「尋常じゃないくらい!」という意味なんですね。(汗)
実は特別寄与分は判例でもあまり認められていない
相続の遺産分割で不公平感を感じることがトラブルの引き金になることがあります。
実家の商売を長年引き継いで、一生懸命に身を粉にして働いてきた。
その甲斐あって会社も順調に大きくなってきた。
親父が細々としていた時代と違って、
今はりっぱな大会社に自分がした!
そんな自負があっても、いざ相続になれば・・・・
長年 親の介護をみてきた。
晩年の介護は悲惨だった。
認知症・・・
徘徊・・・
それはもう筆舌に尽くしがたい苦労の連続だった。
そんな介護の苦労を長年してきたのに、いざ相続になれば・・・・
法律上はみんな相続人は平等である
どんなに実家の商売に貢献してきたとしても・・・
どんなに親の介護を献身的にしてきても・・・
相続する権利割合はみんな平等
それが法律上の原則です。
相続人間で、相続する割合に差をつけるには
①相続人全員で話し合う
②遺言で相続する割合を指定しておく
③寄与分を主張して、相続する割合を増やす主張を裁判所に申し立てをする。(調停・審判)
この3つしかありません。
しかし、なかなかこの寄与分を調停や審判で認めてもらうには苦労するのです。
特別寄与分の判例の基となる条文
なんで法律ってこんなにわかりにくく書かれているんでしょうか?
まあ、頭の悪い私には読むだけで、
睡魔が襲ってきますがねぇ・・・
では、催眠術をあなたにかけるために・・・
「はい、あなたはこれを読むと眠くな~る・・・眠くな~る・・・」
「ぐぅ・・・・ぐぅ・・・・ZZZZZZZZZZZZ」 オレが眠ってしまってどないすんねん!(笑)
民法第904条の2〔寄与分〕
①共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の
療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした
者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人
の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から
第902条までの規定によつて算定した相続分に寄与分を加えた額をもつてその者の相続
分とする。
②前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同
項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額
その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
③寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除し
た額を超えることができない。
④第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があつた場合又は第920条に規
定する場合にすることができる。
では、わかりやすく判例を出しておきます。
こちらのほうがわかりやすいと思うので・・・
特別寄与分に関する判決例
特別寄与分の判決例で代表的なものだけ紹介しておきますね。
大阪高等裁判所平成19年12月6日決定(出典:家庭裁判月報60巻9号89頁)
遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告審において,被相続人の死亡まで自宅で介護をした申立人の負担は軽視できず,申立人が支出した費用は,遺産の形成維持に相応の貢献をしたものと評価できるが,遺産建物の補修費関係の支出は,被相続人と同居していた申立人自身も相応の利益を受けており,申立人の寄与を支出額に即して評価するのは建物の評価額からすると必ずしも適切ではないこと,農業における寄与についても専業として貢献した場合と同視できる寄与とまでは評価できないことなどから、寄与分を遺産総額の30パーセントと定めた原審判を変更し,遺産総額の15パーセントと定めた。
大阪家庭裁判所平成19年2月26日審判(出典:家庭裁判月報59巻8号47頁)
被相続人に対する介護を理由とする寄与分の申立てに対し、申立人の介護の専従性を認めた上で、申立人が被相続人から金銭を受領しているものの他の相続人らも同様に金銭を受領していた事実があるから、その介護の無償性は否定されず、寄与分を評価する上で評価すべき事情としてその他の事情と併せ考慮し、申立人の寄与分を遺産総額の3.2%強である750万円と定めた。
2 被相続人が所有していた資産を運用し、株式や投資信託により遺産を増加させたことを理由とする寄与分の申立てに対し、株式、投資信託による資産運用は利益の可能性とともに常に損失のリスクを伴うことから、単に株価が偶然上昇した時期を捉えて被相続人の保有株式を売却した行為のみで特別の寄与と評価するには値しないとして、寄与分の申立てを却下した。
大阪家庭裁判所平成19年2月8日審判(出典:家庭裁判月報60巻9号110頁)
被相続人に対する身上監護を理由とする寄与分の申立てに対し、被相続人が認知症となり、常時の見守りが必要となった後の期間について,親族による介護であることを考慮し、1日あたり8000円程度と評価し、その3年分(1年を365日として)として,8000円×365日×3=876万円を寄与分として認めた。
いかがですか?
相続する割合でもめた場合、
家庭裁判所に寄与分をなかなか認めていただけないことが
おわかりになられたでしょうか?
家庭裁判所が示した「特別寄与分」の考え方
少々古い情報で申し訳ありませんがかなり前に家庭裁判所が特別寄与分についてパンフレットを出されました。
あまりにも一般の皆さんがこの「特別寄与分の考え方」に家庭裁判所との乖離が大きいからでしょうね
一度ご覧になってみてください。
寄与分の主張を検討する皆様へ
平成25年12月3日 東京家庭裁判所家事第5部寄与分とは共同相続人中に、身分関係や親族関係から通常期待される以上に被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるとき、その寄与者の相続分に寄与分額を加算するものです。
扶養義務の範囲内の貢献は寄与にあたりません。この特別の寄与を評価して算出した割合や金額のことを、寄与分と言います。
寄与分が認められるということは、法定相続分や指定相続分を修正することになりますので、修正に足りる事情を、自らが立証することが必要です。寄与分が認められるためには
①主張する寄与行為が相続開始前の行為であること
被相続人が亡くなった後の行為、例えば、遺産不動産の維持管理・違算管理・法要の実施などは、寄与分の対象になりません。②寄与分が認められるだけの要件を満たしていること
※要件とは、
「その寄与行為が被相続人にとって必要不可欠であったこと」、
「特別な貢献であること」
「被相続人から対価を得ていないこと」
「寄与行為が一定の期間あること」
「片手間ではなくかなりの負担を要していること」
「寄与行為と被相続人の財産の維持又は増加に因果関係があること」
などで、その要件の一つでも欠けると認めることが難しくなります。③客観的な裏付け資料が提出されていること
寄与分の主張をするには、誰が見ても、もっともだと分かる資料を提出する必要があります。主張の裏付けとなる資料のないまま主張すると、解決を長引かせてしまうだけです。以上の点を踏まえて、寄与分のご主張を予定されている方は、次回調停までにご自分の主張内容をご検討下さい。すでに寄与分の主張をまとめて裁判所に書面を提出されている方は、もう一度自分の主張内容を読み返してみて、ご主張の内容に無理がないかどうかをご確認下さい。
これから考えれば
「親の介護をしてきたのは私だから!」
「長年 親と同居してきたのは私たち家族だから!」
という理由で遺産が多く相続できないことをご理解いただけましたでしょうか?
そして涙ながらに家庭裁判所に訴えても客観的資料や証拠がなければ難しいことがお分かりになっていただけましたでしょうか?
法律とは時に残酷で、現実に合っていないこともよくあります。
「そんな殺生なぁ!」
「それはないやろ!」
時として、そんな調停や審判が下されることがよくあります。
でも、それが今の法律なんです。
何も対策をしておかなければ、法律は味方をしてくれないということ
法律は
それを知っている者には優しく、
知らない者には残酷なものです!
だから、私と一緒にすこし相続というものを勉強していきませんか?
なにも税理士レベル、弁護士レベルの知識など必要ありません。
基本中の基本だけ抑えておけば、避けられる相続トラブルはたくさんあります。
特別寄与分を認めてもらうには相当の準備が必要
調停までもつれこんだ場合、
特別寄与分を主張するにはそれなりの準備があらかじめ必要です。
家庭裁判所はあくまで当事者からの証拠を重視します。
いくらあなたが涙ながらに訴えても
その証拠が無ければどうにもなりません。
それが調停や審判というものです。
だから、
あなたが貢献した度合い
あなたが介護でどれだけ苦労したかと言う度合い
それはあなたが調停委員に証明しなければいけないのです。
こちらも参考にしてください
参考:これがもめる相続トラブルまとめ【ワースト5】次はあなたの番?
相続トラブルになってしまったがどうにか解決できる方法はないか? そんなご相談が多いのですが残念ながら双方が100%満足できる解決法はありません。 相続で誰かが『得』をすれば誰かが『損』をしますから仲良く円満解決はできませ …
相続でもめてからでは遅いのですよ!
特別寄与分の要件まとめ
特別寄与分が認められるには
①特別の寄与
②相続財産の維持または増加
が必要です。
①特別の寄与とは
この「特別の寄与」とは多くの方が「親の介護」を想像されるかもしれません。
でも、この「特別の寄与」とは通常のものでは足りずとにかく顕著のものではなければいけないことを知っておいてください。
・無償であるか否か?
・社会通念上において通常一般的に期待される程度を大きく超えているののか?
という観点から判断されます。
夫婦や親子や兄弟姉妹には互いに扶養義務が法律で定められています。(相互扶養の原則)
ですから同居して面倒をみてきただけでは「特別の寄与」とは判断されないのです。
②相続財産の維持または増加
「被相続人の事業に関する労務の提供」がこの「特別の寄与」といえるには「別の従業員を雇うよりも明らかに安い給料で働いた」とか「勤務先を辞めてまで実家に戻った」なども要件いなるでしょう。
特別寄与分の認定
特別寄与分の認定にはこの2通りしかありません。
・相続人全員で話し合って決める(全員一致)
・家庭裁判所によ寄与分を定める調停を申し立てる
相続人の誰かから特別寄与分の主張がある場合には、これを定めないと具体的相続分が算定できず遺産分割もできません。
ただ、特別寄与分がすんなり相続人全員で認められるのは難しいのはあなたも十分承知しているはず!
では、家庭裁判所に調停を申し立ててでも「特別寄与分」を算定してもらいたと考えるでしょう。
家庭裁判所では
・寄与の時期
・方法
・程度
・相続財産の額
・その他一切の事情
などを考慮して特別寄与分を定めますがこれには客観的資料や証拠が必要になります。
これがどれだけ難しいことは誰でもわかると思います。
涙ながらにただ訴えても資料・証拠がなければ難しいのです。
司法統計をみても
・特別寄与分を認めた審判例は1割以下
・5割以上の特別寄与分を認めたのはわずか10件だけ
というデータもあります。
わからないことは専門家に相談したほうが早道です。
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