「現妻との子供」と「前妻との子供」が相続でもめないように離婚した前妻との子供に相続放棄を事前にさせたい!
私には前妻と今の妻(後妻)との間にそれぞれ子供がいます。
将来、親である私が亡くなった時に遺産相続でもめないか?心配です。
離婚や再婚経験者が相続でもめやすいのは誰でも予想できますよね。
前妻との子供と後妻との子供
どちらも可愛い子供には違いありませんし、法律上もどちらの子供も原則平等に取り扱われます。
でも、現実問題として後妻との子供との絆のほうが強いことも多いです。
自分の老後や介護の面倒はやはり長年一緒に暮らしてきた後妻との子供が献身的に尽くしてくれるケースが多いものです。
離婚してから数十年、すでに滅多に会わなくなってしまっている前妻との子供と常日頃から交流のある後妻の子供であれば、
やはり「相続についても差をつけてあげたい!」と考えるのも普通の考えだと思います。
でも、それってかなり難しいことを知っておいてくださいね。
前妻と後妻にそれぞれ子供がいる方からのご相談
私は離婚と再婚をして、前妻との間に娘が一人、今の妻(後妻)との間に子供が一人(息子)がいます。後妻と息子は私の事業を継いでくれて一生懸命頑張ってくれています。
親のひいき目から見てもよくやってくれていると感心していますし、この息子であれば安心して事業承継して今の会社も大きくしてくれると確信しています。
こんな私ですが、少々心配なのは私が亡くなった時に遺産相続で争わないか?ということです。息子は腹違いの姉がいることは知ってはいますが、現実にはほとんど交流がありません。
遺産相続で前妻との子供である娘が入ってくれば今の会社経営にも影響します。
そこで、まだ私が元気な間にその心配を取り除いておきたいと考えています。
ですのである程度の財産(現金3000万円程度)を予め渡したうえで、
前妻との娘には相続放棄をするという旨の書面に署名捺印(実印)させようと考えています。
なにかこのやりかたで問題はありませんか? 会社経営者 U・Aさん(71歳)
相続発生前に相続放棄はできないので事前に離婚した子供に相続放棄をさせることはできません。
たとえ娘さんがそれを了承し、相続放棄を約束するような書面に署名捺印していたとしても
法律上それが有効かどうかは疑問です。
なぜなら相続前に相続放棄はできないからです。
遺産分割の時に
「あの時、こんな書類にさいんしたよね?」
という程度です。
離婚した前妻の子供に相続放棄させる方法の代わりになるのはやはりきちんと遺言書を書くしかありません。
それでもご存知の通り、遺留分というものが前妻の子供にはあります。
10秒でわかるこの記事の内容と目次1 離婚した前妻との子供に遺産相続させない方法を教えてください2 離婚した子供に相続させない遺言書を書いても最低限保証された遺留分というものがある3 相続税がかからない範囲の相続で離婚し …
ただ、遺留分については生前に放棄することを約束させることは可能です。
遺留分とはたとえ遺言書などで「●●に全財産を相続させる」と書かれている場合でも他の相続人が「ちょっとまった!私には遺留分がある!」と最低限保障された相続できる権利です。
ちょっと相続放棄と遺留分放棄は微妙に異なるのでご注意くださいね。
遺留分とは最低限度相続できる権利のことを言います。
通常は法定相続分の半分と考えていただいて結構です。
妻が既に亡くなっていて子供だけが相続人で子供が2人の場合は
法定相続割合は50%ずつになります。
そんなケースで遺言書などで子供のどちらか一人に全財産を相続させるという内容で相続させた場合、遺産を貰えない相続人から「私の遺留分が侵害されているから遺留分減殺請求をします!」と申し立てて、自分の遺留分(この場合は25%)を取り戻すことができる権利です。
遺留分の放棄には家庭裁判所の許可が必要
遺留分の放棄には家庭裁判所の許可が必要で、「遺留分放棄の審判の申立て」をしなければいけません。
家庭裁判所が遺留分の放棄を認める基準
①遺留分放棄が本人の自由意思に基づくものであること。
②遺留分放棄の理由に合理性と必要性があること。
③代償性があること。
・特別受益と考えられることがあるか?
(結婚資金や生活資金など経済的援助をしてきたか?など)
・放棄と引き換えに現金などの財産をもらう代償があるか?など
ただし、必ず遺留分放棄を家庭裁判所が認めるとは限らない
遺留分放棄については、「親自身がある子供に対して遺留分の放棄を強要しているのでは?」と疑いの目で見ています。
また、一方的に不利益が認められる場合は許可しません。
遺留分放棄の代償として贈与が行われる場合には、
すでに贈与が行われているか?
遺留分放棄と引き換えにと同時に行われるか?
なども家庭裁判所は見ています。
遺留分放棄の許可がありる割合は概ね80%~90%程度と言われています。
遺留分を放棄しても相続人になることに注意
たとえ遺留分放棄の手続きをしても、亡くなった方(被相続人)が遺言書を書いていない場合には、法定相続割合にしたがって相続することも可能であることに注意しておいてください。
相続発生前に遺留分放棄をした子供でも、相続人になりますし、遺産分割協議の当事者にもなります。
遺留分放棄をしていても相続放棄はしていません!
だからきちんと法的に有効な遺言書を書いておくことを忘れないでくださいね。
親が生前に対策を行っていくことが相続トラブル回避には大事
遺産相続トラブルのよくあるケースが、今回のように先妻の子供と後妻の子供の遺産分割バトルです。
先妻の子供に遺留分放棄をさせるのと同時に相続時精算課税を活用した生前贈与しておくのも遺産相続トラブルを回避する有効な対策です。
10秒でわかるこの記事の内容と目次1 離婚した前妻との子供に遺産相続させない方法を教えてください2 離婚した子供に相続させない遺言書を書いても最低限保証された遺留分というものがある3 相続税がかからない範囲の相続で離婚し …
■いくらネットで検索しても無駄です
相続のもめごとは百人いれば百通りで同じケースはありません。
だからネットでいくら解決策を探していてもあまり意味はないのです。
遺産分割で納得できないが自分の主張が正しいのか?間違っているのか?
そんなモヤモヤを抱えたままずっと悩んでいるよりも弁護士に相談するのが解決の早道です。
「相続弁護士ナビ」では、全国の相続に強い弁護士の情報をご提供するサイトです。