親が「自分のこの土地は子供ではなく孫に相続させたい?」と考える。
そこにはさまざまな事情や経緯があると思います。
例えば
「息子の嫁には1円も相続させたくない!
息子に相続させたら息子の嫁にもいずれうちの遺産が相続することもある
だから次世代の孫に相続させだい!」
ということもあるでしょう。
「自分も親から代々引き継いできた先祖伝来のこの土地だけは守っていきたい!
そのためにはこの孫に相続させるしかない!」
ということもあるでしょう。
「息子はこの田舎から出て行った人間
この田舎に残った娘の子供(孫)にこの土地を相続させたい!」
ということもあるでしょう。
また
「えっ?孫に相続させたら相続税が安くなる?!」
という場合もあります。
今回は
「孫に土地を相続させる!?」ことのメリットとデメリットについて考えてみましょう。
本来、孫は親の土地の法定相続人ではない
まず最初に知っておいて欲しいのは
孫は本来、法定相続人ではない!
ということなんです。
参考:相続順位を再確認!独身・離婚・配偶者なし・子供がいない場合
生前にいくら親が「孫に相続させたい!」と考えていて、それを子供たちに公言していても孫はその相続に一切口出しできない部外者なのです。
子供が亡くなっていればその子供(孫)は代襲相続人
ただ、孫が法定相続人になる場合もあります。
そうです。
親より子供が先に亡くなってしまった場合は、その子供の相続権を孫が引き継ぎます。
これを代襲相続といいます。
今の高齢化社会では珍しくなくなってきていることも知っておいてくださいね。
孫に土地を相続させるには「養子縁組」か「遺言書」
いくら自分の土地を孫に相続させたい!と考えていてもなにもしなければ孫に自分の土地を相続させることはできません。
なので孫に相続させるにはそれなりの対策措置を講じなければいけないのです。
孫を養子にして法定相続人にする
孫と養子縁組をする
そうすることで孫はれっきとした法定相続人になります。
(実子がいる場合は一人、実子がいない場合は2人まで養子縁組できます)
養子縁組すると法律上は実子も養子もなんら相続では同じ立場になります。
ただ、これだけでは「この土地をこの孫に相続させる!」ということの実現には不安が残ります。
養子縁組した孫以外に子供がいれば、子供と孫みんなで話し合って決めるのが遺産相続だからです。
ですから、実子がいる場合には「特定の土地」を「特定の孫」に相続させる!には養子縁組だけでは不十分なのです。
なぜなら実子も養子にした孫も同じ法定相続人で相続する権利は全く同じだかからです。
孫との養子縁組に立ちはだかる意外なハードル
「孫のおまえにこの土地を相続させるために養親縁組しよう!
そんな祖父からの申し出でも孫自身からNO!というケースも少なくありません。
意外と祖父との養子縁組に拒否反応を起こす孫も少なくないのです。
孫が祖父との養子縁組を拒む理由は
・長年使ってきた「姓」が変わる?
・そもそもその土地を欲しいとは思わない
※意外と「子供(孫)はその土地を相続したくない」というケースも多いんです。
このあたりはしっかりと孫と話し合っておかなければいけません。
参考:実は相続したくない?墓や仏壇・不動産(土地・農地・親の家)借金
遺言書で孫に相続させる
「親が自分の土地を子供の誰かではなく孫に相続させたい!」
そう考えるのにはそれなりの事情や理由がある事でしょう。
そこには
特定の土地
特定の孫
というケースが多いです。
親自身が自分の遺産を子供や孫たちにどんな風に遺産分割させるか?
それを子供や孫たちに指示するには「遺言書」でしか方法はありません。
もちろん、遺言書が無くてもしっかりと子供たちに親の考えを伝えておくことで可能は可能ですが果たしてそれが必ず実現するか?といえば大きな疑問ですからね。
ですから遺言書で「この土地は孫の●●に遺贈する」ということを書いておかなければいけないのです。
※遺贈・・養子縁組していない孫は法定相続人ではないので相続ではなく遺贈という表現になります。
ただし気を付けておかなければいけないのが「遺留分」という考えです。
遺留分とは最低限保障された相続できる権利です。
たとえ遺言書で指定された遺産分割のやり方に異議を申し立てることができる権利です。
※遺留分侵害を知った時から1年間、または相続発生から10年以内
通常子供の場合には法定相続分の半分が遺留分になります。
問題になるのは「遺産のほとんどがその土地である場合」です。
たとえ遺言書で「この土地はこの孫に遺贈(養子縁組している場合は相続)させる」と書いていても、他の子供が遺留分減殺請求を申し立てれば法定相続割合の半分は請求できるのです。
そうなればもうそれは立派な遺産相続トラブルです。
この「遺留分を考えた遺言書にするか否か?」は我々もすごく悩ましいところですが、このあたりは各家庭の経緯や事情も考えなければいけません。
親が自分の遺産相続についての考えをしっかりと子供たちに伝えて、その子供たちも全員賛同してくれているのなら遺留分を考えない遺言書でもよいと思います。
しかし、私は遺産相続は「性善説」ではなく「性悪説」で考えておくべき!と考えています。
なぜなら、いざ遺産相続が起これば「お金の魔力」や「妻などの配偶者の口出し」でよく相続ってもめるものだからです。
だからこそ一部の土地などを売却してお金に換えておいて、遺留分相当はそれぞれの子供にも遺産相続させるような遺言書が良いケースも少なくありません。
参考:円満な実家売却は相続専門不動産会社のやり方を参考にすればよい
孫に土地を相続させることのデメリット
親自身が「この土地をこの孫に相続させたい」と考えていて、他の子供たちもそれに賛同してくれていても「孫に土地を相続させることのデメリット」もしっかりと知っておかなければいけません。
相続税が2割増える
1親等の血族以外の方への相続税は2割加算の対象となります。
被相続人の1親等の血族とは「子供」「親」となります。
※代襲相続で相続人となった孫の場合は対象外
小規模宅地の特例が使えなくなる
小規模宅地の特例とは自宅などを相続する時に同居の配偶者や子供に相続させるとなんとその土地の相続税評価額を80%減で評価しましょう!という土地の相続税対策の大きな柱となる制度があります。
しかし「孫へ相続させる土地」の場合にはこの小規模宅地の特例が使えなくなります。
参考:小規模宅地の特例申告で同居要件が否認される例をわかりやすく説明
そこまでして孫に土地を相続させるメリット
相続税の節税でデメリットも多いのが「孫に相続させる土地」なのですが、そこまでしてもやっぱり「孫に土地を相続させたい」と考えるべきメリットもあります。
相続税課税機会を1回飛ばせる
今は超がつくほどの高齢化社会です。
親が超高齢(90歳?~100歳?)なら子供もすでに高齢(60歳~70際?)です。
失礼ながら親が亡くなって相続が発生したら、すぐに次の子供の相続が待ち構えている?とも考えらえるのです。
たくさんの遺産(土地など)がある場合は相続を一世代すっ飛ばすことが相続税節税となる場合もあります。
孫を養子にして相続税課税の回数を1回すっ飛ばすこともできるのです。
ただこのあたりは
・相続に強い税理士との相談や連携
・相続トラブルを避けるために子供たち全員の理解
は必須になります。
孫の養子縁組で相続税基礎控除額が増える
養子縁組は実子がいる場合は1人、いない場合は2人まで養子縁組できます。
孫を養子縁組すれば
・1人の場合は600万円
・2人の場合は1200万円
相続税基礎控除額が増えて、相続税課税財産を減らすこともできます。
たくさんの遺産をお持ちの方にはあまりメリットは大きくないですがそれほどの遺産は無くても「なにがなんでも相続税をゼロにしたい!」方にはメリットかもしれません。
ただ私は行き過ぎた相続税対策には警鐘を鳴らしています。
参考:正しい相続税対策は「払える相続税なら現金でさっさと納税」が正解
家を継がせる家督相続の考え
家督相続という考え方は今は法律ではなくなっています。
しかし、たとえ「そんなの時代遅れの古い考え方!」といわれても現実にはこの家督相続という考え方は今も生き残っているのも現実です。
「代々引き継いできた先祖伝来のこの土地だけは守っていっておくれ!」
「ただ土地を相続するということではない。
●●家という家を守っていくことを大事にしたい!」
そんな考えから「この土地を孫に相続させる」という親の考えもあるかもしれません。
できることならそんな親の考えを実現させてあげるのも親孝行のひとつかもしれませんよ。