相田みつお先生の言葉で
「奪い合えば足らぬ、わけ合えばあまる」
というのがあります。
これは相続の場合に特にいえる格言です。

遺産を分け合うためには
親がたとえ少ない遺産でもちゃんと子供たちに分け方を指示していたら相続でもめることはありません。
子供たちがたとえ少ない遺産であっても目の色を変えて奪い合うから争いになるんです。

では親から相続する遺産を子供たちが仲良く分け合うにはどうすればいいのでしょうか?
それはやはり
生前に親子で相続のことを話し合っておく
ことしかできないような気がしています。

それが難しいから困っているんじゃないか!?
というあなたに私からのアドバイスは
ならばあなたが考えている遺産相続のやり方は諦めてください!
ということしかで私には言えません。
なぜなら
法律では「子供たちの法定相続割合はみんな同じ」
たとえ調停にまで持ち込んでも基本的には法定相続割合が強い
からです。

だからこそ、話し合いたくないテーマである「相続」のことを親子で話し合っておく必要があるのです。

親が元気に生きている間の生前に親子で相続の話し合いの進め方


相続の話を親に切り出すのって確かに難しいですよね。
ですからいきなり遺産相続のことをズバッと切り出すのはちょっと控えた方がよいかもしれません。
しかし、いずれこのままではあなたが考えているような相続はできないことは薄々でもあなたは気付いているはずでは?
そんなあなたに知っておいて欲しいこんな話題です。

生命保険金の請求期限は3年(時効で請求権消滅)
延命治療のこと
お葬式のやり方やお墓の管理・引継ぎのこと
老人ホームのこと(種類・費用)
跡継ぎのこと
これらの話題をきっかけに遺産相続のことまで話題へと導いてはいかがでしょうか?
参考:【相続の話し合い】は法律と不動産に詳しい第三者を入れると良い
参考:親をその気にさせるために「エンディングノート書き方・相続セミナー」

「親の死」はいつでもタブーにされるテーマだが避けては通れない

「親の死」なんて口に出すだけでも縁起が悪い?!
そう思うのは誰も同じです。
しかし、そのことについてはいずれ近いうちに考えなければいけない時期がやってくるのはあたなも承知のはず。
その時にすでに親が認知症であったり、余命宣告でもされていたらとても話し合えることではありません。

親子で相続のことを話し合うには
焦らず時間をかけてゆっくりと
親がまだ元気なうちに
することが重要なんです。

あなたがまず相続の現実と正しい知識を得ておくことが大切

たぶんそれでもあなたは「親と相続の話し合いをする」ことに大きな抵抗を感じているはずです。
ですから、そんな嫌な役回りをさせてしまうことになるあなたに知っておいて欲しいことがあります。

特別寄与分はあなただけで決められることではない

一番多い相続トラブルは「介護の不公平が遺産相続で清算されない」ことではないでしょうか。
あまり相続の現実を知らないあなたは
私はこんなに親の介護で苦労しているんだから特別寄与分を認めてもらって当然
と考えているかもしれません。
そんなあなたに頭から冷や水をぶっかけるような辛いことをお伝えしなければいけないことをお許しください。
それは
特別寄与分はあなたが勝手に決めることではなく、相続人全員が話し合って決めるもの
だということです。
さあて、あなたが考えているだけの特別寄与分は他の兄弟たちがすんなり認めてくれるでしょうか?
おそらく簡単には認めてくれないことはあなたも感じているのではありませんか?

それなら家庭裁判所に調停してでも特別寄与分を認めさせる?

「●●のできる法律相談所」とかテレビの特集番組で弁護士の先生が言っていた言葉がこの特別寄与分です。
確かに法律的にも特別寄与分はきちんと認められています。
しかし、それはきっとあなたが考えているほどの評価ではありません。
さらに、
「あなたがどれだけの苦労を親の介護だったか?」
あなた自身が客観的な証拠と資料を家庭裁判所の調停委員に提出して認めさせなければいけないのです。
いくら涙ながらに今までの介護の苦労を調停委員に訴えても伝わりません。
ですからこの特別寄与分を家庭裁判所に認めさせるのは相当なハードルが高いことは覚悟しておいてください。
これは私がいつもテレビや週刊誌の相続の特集を観たり聞いたりして「だからみんな特別寄与分を誤解してるんやからもっと現実を話さんかい!」と思うのです。

また法律の意味する特別寄与分とは「尋常じゃない?普通の何倍もの?」という意味です。
ただ「親の介護をしてきたんだから」では認めてはくれないことも知っておいてください。
法律で定められている「相互扶養の義務」
これは「親が子供の面倒をみるのが当たり前なように、子供が親の面倒をみるのも当たり前」のことなのです。
ただ「誰が親の介護の面倒をみるのか?」は何も書いてはいないのです。

判例では極めて重度の認知症の親の介護を24時間365日何年も続けてきた子供に特別寄与分が認められたのは1日わずか数千円というケースもありました。
ですのでたんに親の面倒をみてきたからといってあなたが考えているほどの特別寄与分は諦めたほうがよいかもしれません。

お金がない親の介護と相続は親も子も地獄である

「わしのことは放っておいてくれ!
 いざとなったら老人ホームにでも入るさかい!」
これ、私が家族で相続の話し合いをするお手伝いをした時に耳にタコができるくらい聞いている言葉です。
でも、知っておいて欲しいのは「入りたくても入れないのが老人ホーム」なんです。

みなさんよくご存知の老人ホームはきっと費用の安い公的な『特別養護老人ホーム(通称」特養)』のことを思い浮かべると思います。
でも、これ『要介護3』以上の方しか入れません。
要介護度3というのはかなり重い要介護度の状況を言いもはや家族で介護できる段階を超えています。
そんな切羽詰まった状況においてもすでに特別養護老人ホームへの入所希望者が殺到していて入りたくても入れません。
必然的に民間の老人ホームを選択肢に入れないといけないのですがこれがまた難しい。
私も老人ホームの紹介を大阪で行っておりますがなかなかご予算と希望条件が合わないのです。
みなさん希望されるのは「年金の範囲内で」という十数万円程度の老人ホームを希望されますがなかなか気に入る老人ホームなんてありません。
月額費用十数万円の老人ホームは普通は低価格帯老人ホームになるのです。
そこで提供される介護サービスは決して痒いところに手が届くような手厚い介護サービスは期待できない現実があることも知っておいてください。
また、そういう低価格帯老人ホームは経営的にもぎりぎりの状況です。
※安くしたくて料金を安くしているのではありません。
ですから要介護度の高い方を優先的に入所させている現実もあります。
いく空室があっても要介護度の低い方の紹介を拒む老人ホームも多いです。
人件費節約のため必要最低限の介護スタッフしかいませんし、そのスタッフもコロコロとよく入れ替わります。
そのため介護スタッフの手もかからず介護報酬も儲かる要介護度の高い方ばかり優先的に入居させているところが多いのも仕方ありません。
ですから比較的元気な方のための老人ホーム(サ高住・住宅型)であっても要介護度の高い方や重い認知症の方ばかりのところも多いです。正直、普通の方には居心地の決して良いところとは言えない気もします。
私も要介護度1程度の方が家庭の事情で低価格帯老人ホームをお探しの方の場合は特に苦労しています。

それに比べて超高級とまではいわないまでもそこそこの老人ホームではスタッフの教育も素晴らしく低価格帯老人ホームとは雲泥の差があることも珍しくありません。
ひとつの目安は「入居一時金数十万円・毎月費用20万円以上」程度がこの部類に入ります。
もちろん入所されている方たちもお上品な方たちばかりです。
もちろん要介護度の低い方もたくさにらっしゃって様々なイベントも催されたりして活気があります。

低価格帯老人ホームは「介護してやっている」
高級~中級の価格帯の老人ホームでは「介護させてもらっている」
この違いは大きいですよ。

親はいくらお金を持っているのか?

親子で相続の話し合いをすることの中で重要なのは遺産相続のことだけでなく
親がいくらお金を持っているか?
もとても重要なのです。
政府も慌てて取り消しましたが老後資金2000万円はあながち間違ってはいない見解のように私も感じています。

現実的に子供が介護できない(介護したくてもできないのが現実)のであれば、そこはやはり「お金で解決」するしかないことにも目を背けないでください。
ただ大きな問題は「財産はあってもお金は無い?」という親が多いのです。
私がよく実家の売却のお手伝いをしているのも「お金は無いが家はある」という方に老人ホームの費用に充てるためというのも少なくありません。
特に注意して欲しいのは「親の介護に費やした費用が相続で清算されない」こともあるからです。

話し合うテーマは「遺言書」と「実家の売却」

ここまで目を通していただければ私が「田舎の親が70歳を超えたら実家を売却して呼び寄せを勧める理由」もご理解いただけたかもしれません。

相続で法定相続割合以外の遺産分割は
親が遺言書を書く
相続人全員で話し合い全員が合意する(ひとりでも反対ならNG)
しかありません。
おそらく生前に親と相続の話し合いをしておきたいあなたはあなたなら法定相続割合以外の遺産分割を考えているはずではないですか?
おそらく介護の不公平感を感じていて相続でそれを清算したいと考えているのではないですか?
ならば「遺言書」のことも親子で話し合うべきだと思います。
そんなきっかけ作りに私はエンディングノート書き方セミナーのお手伝いもしています。
参考:親をその気にさせるために「エンディングノート書き方・相続セミナー

「親の介護のお金は実家を売ってでも確保する」という決断も時に必要なんです。
さらに・・・・

親が亡くなった後に他の子供が親の遺産を調べることはとても難しいことを知っておいてください

あまり大きな声では言えませんが、小さい声では聞こえません。(笑)byオール阪神巨人師匠のネタより
どうして親の家まで相続発生前に売ることを勧めるのか?
それは不動産が子供たち同士でとても分け難い財産だからです。
それはお金があれば親の気持ちや考え次第で子供に報いてあげることができるからです。
それは親が亡くなった後に親の遺産を調べることってとても大変で難しいからです。

こちらの相談事例をお聴きください。

ただ漠然と聞けば「なんと欲深い姉だ!」と不愉快になるかもしれません。
でも、これが「何年も親の介護に尽くしてきた姉VS親の介護などしなかった遠く離れて暮らす妹」という設定ではどうでしょう?
相続はきれいごとでは済まされません。
だれかが多く遺産を相続すれば、そのぶん誰かの相続する遺産は少なくなるのです。
この場合も取引銀行の取引支店を相続発生前に変えておけば・・・・?
もちろん親の協力が必須ですし、できれば遺言書も書いて欲しいところですよね。

親が亡くなった後では相続の話し合い応じない兄弟が出てきても仕方ない

相続の話し合いに応じない兄弟

「介護してきた子供」も「介護してこなかった子供」も法律的には平等な法定相続割合です。
そこに「親の介護してきたことへの貢献度」を認めてくれなければもはや諦めるしかありません。
なぜなら遺産分割や相続手続きは相続人全員の合意と納得が必要だからです。

あなたにはあなたなりの理由や事情があっての相続に主張をすると思います。
でも、そんなあなたの主張を認めるような相続の話し合いに応じない兄弟が出てきたらそこでもはやなにも話は進まなくなるからです。

遺言書が無ければ話し合いでしか決まらない

だからこそ親が生きているうちに相続のことを話し合って、できれば遺言書まで書いてもらわなければいけないのです。
その遺言書も公正証書遺言であればです。
この公正証書遺言書さえあれば他の兄弟姉妹たちに関係なく粛々と登記名義の変更や親名義の預金の解約もできるのですからね。

相続の話し合いに応じない兄弟が出てきたら?

これだけお話ししても多くの方が生前に親と介護や相続の話し合いを持つことを避ける方が少なくありません。
なのに、「遺産相続の不平不満」を主張されてくるのです。

相続の話し合いに応じない兄弟が現れてきたらどうすべきか?
それはもう互いの主張を認めある落としどころを見つけるか?
相手の主張を潔く認めて法定相続割合通りの遺産相続にするか?
しかありません。

もしくは遺産相続手続きを塩漬けにして放置する方も多いのですが、これは次世代にとって大きな迷惑でしかありません。
あなたの代の相続トラブルはたとえ多少納得できなくてもあなたの代でケリはつけておくことを強くお勧めします。
そうでもしないと次世代ではネズミ算的に法定相続人が増えてもはや手の付けられない状況になってしまうこともよくあることなのです。

相続の話し合い(生前・応じない兄弟)のまとめ

●生前に親と相続のことを話し合う機会を積極的に作ることが大事
●生前に親と相続のことを話し合っておかないと親の死後では相続の話し合いに応じてくれない兄弟が出てきても仕方がない

くれぐれもこのことは肝に銘じておいてくださいね。

遺言書もない?
相続人同士で話し合いもまとまらない?
そんな状況では法定相続割合の遺産分割しかできないのですから・・・

そんなことを可能な限り避けるために私たちはこんなお手伝いもしていますのでお気軽に相談してみてください。